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学科 社会学科
年度 2023
ゼミ名 藤本 昌代
タイトル 過疎地域の実状 ー人口減少率50%超の集落への調査よりー
内容  少子高齢化の進む集落の生活実態はどのようになっているのだろうか。過疎地域に関する研究はとりわけ地域活性化と結び付けられているが、十分な支援を得られていない集落の実状を明らかにする先行研究は少ない。そこで本研究では、地域活性化の見込みが厳しい集落に着目し、過疎化が深刻になった背景と過疎地域が抱える問題について明らかにすることを試みた。
 集落の住民と市役所職員へのインタビュー調査より、集落の過疎化が深刻になった背景として、生活利便性の低さ、公共交通機関の不足、住民同士のつながりの希薄化、住民支援に充てられる予算の不足などが挙げられた。また、こうした背景による当該集落が抱える問題は、免許返納後の移動手段の不足、緊急時の支援関係の希薄化、集落の担い手不足などである。本研究により、多くの先行研究で取り上げられる「地域活性化」ではなく、「住民支援」の重要性を明らかにすることができた。しかし、過疎地域は多種多様な背景・状況にあることも明らかになったことから、過疎地域に関する研究においては今後もあらゆる過疎地域・集落を調査していくことが望まれる。
講評 本稿は、少子高齢化の過疎地域の生活実態を記録に残したいという著者の思いがこもった論文である。高齢者比率が非常に高く、さらに人口密度が低くなってしまった地域に何が起こるのか、ということを現地での聞き取り調査をもとに丁寧に描いている。本稿で注目すべき点は、高齢者の免許返納と公共交通機関が補完的に機能するのが困難であり、その背後に市町村合併の行政区統合による問題があること、住民にとって「当たり前」に生活することの難しさなどが見出されている。また、かつては「村社会」といえば、閉鎖的な親密性の所在、また、相互扶助を規範とする高齢者とそれを好まぬ若い世代の意識の違いなどが指摘されてきたが、人口密度が減少した村社会は、高齢者同士もつきあいが疎遠になり、相互扶助が行われなくなりがちで、紐帯の脆弱化が本調査で発見されている。本稿は現代日本の地域にとって重要な問題を描き出したものと言えよう。
キーワード1 過疎地域
キーワード2 つながりの希薄化
キーワード3 住民支援
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