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学科 | 教育文化学科 |
年度 | 2023 |
ゼミ名 | 奥井 遼 |
タイトル | 絵本と視覚障害児―盲学校のフィールドワークをふまえて― |
内容 | 本稿では、弱視・全盲を含めた視覚障害児と絵本に着目し、この2つがどのように関わり合っているのかについて、絵本の読み手の観点から明らかにした。調査の結果、絵本の読み聞かせは視覚障害児にとって晴眼者の世界を知る手掛かりとなるだけではなく、視覚障害者の世界を知るための媒体となっていることが示唆された。視覚障害者の中でも弱視と全盲という「見え方の違い」から子どもたちによる晴眼者の世界との向き合い方も異なったが、盲学校は絵本という媒体を用いて外の世界への興味・関心を視覚障害児にもたらし、絵本の読み聞かせが視覚障害児にとって娯楽としてだけでなく日常生活を送る上で様々なものに興味を持ってもらうために用いられていくべき存在であることが示された。視覚障害児にとって絵本の読み聞かせはそれだけで成り立つものではなく、視覚障害児教育に用いられてこそ更なる存在意義をもたらすものであることが明らかとなった。 |
講評 | 盲学校における絵本の読み聞かせ活動に1年間にわたって参加するという、積極的な参与観察を実現させた論考である。未知の現場に入り込み、教職員や小学生たちと信頼関係を気付きながら調査を展開させていった粘り強さがまず評価できる。また読み聞かせの実践者としての試行錯誤や発見のプロセスを丹念に描き込んだことも注目に値する。その上で、読み聞かせ活動の意味を教育活動全体の文脈から明らかにした点も重要である。すなわち、現場で出会った「触察」(物に触れることを重視する活動)に目を付け、読み聞かせとともに行う体験活動こそ、盲学校における教育活動における軸の一つであることを洞察した。生活の場面において感覚的で総合的な体験を賦活することの可能性をふまえて初めて、絵本を介した言葉のやり取りの意味が明らかになるのである。 |
キーワード1 | 読み聞かせ |
キーワード2 | 視覚障害児 |
キーワード3 | 晴眼者 |
キーワード4 | 触察 |
キーワード5 | |
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