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学科 | 教育文化学科 |
年度 | 2010 |
ゼミ名 | 越水 雄二 |
タイトル | 中世スペインにおける寛容の時代―ユダヤ教徒の境遇に注目して― |
内容 | 本研究では、中世スペインにおいてイスラム教のウマイヤ朝による<寛容の時代>と称される時代の実態を探り、多宗教・多文化の共存により、スペインにはどのような文化が育まれたのかを見つめていきたい。 まず第一章では、ローマ時代まで、西ゴート時代、イスラムの到来したスペインを概観し、揺れ動く時代を大きく捉える。次に、第二章ではイスラム・ウマイヤ朝により<寛容の時代>がいかに創出され、また崩壊したかを追う。その際、揺れ動く時代に翻弄され、繁栄と衰退を経験してきたユダヤ教徒の境遇に注目することで、イスラム統治の影響を強く受けたアンダルスといわれる土地の特殊性を検討する。 おわりに、全体を通して私たちが学べる教訓は何かを明らかにしたい。 |
講評 | 2010年度卒業論文講評(教育文化学演習Ⅲ・Ⅳ-④) 今年度の西洋教育文化史ゼミでは、2名が卒業論文を執筆した。 『異文化理解における序列意識の克服に向けて』は、近年の日本における国際結婚の実態に関するデータを切り口に、サイードによる〈オリエンタリズム〉論や、民族の虚構性をめぐる小坂井敏晶の研究などを参考にして考察を進める内容であった。著者は、国境と文化の違いを越える人びとの交流を、政治・経済的背景や社会心理の観点から捉えて、自文化中心の優越感や劣等感に基づく異文化間の序列意識から解放される道を探った。 『中世スペインにおける寛容の時代―ユダヤ教徒の境遇に注目して―』は、8世紀から11世紀までを中心に、後ウマイヤ朝支配下のスペインに見られたイスラーム教徒とユダヤ教徒やキリスト教徒との平和的な共存状態を、〈アル・アンダルス〉と呼ばれた地域における経済と文化の発展にユダヤ人が果たした役割に注目して紹介する内容だった。これは主にマリア・ロサ・メノカルの研究『寛容の文化』に依拠してまとめられた。 以上のように研究対象は全く異なっていても、二つの論文には、異文化間の交流に関する問題を考察した点ではテーマに共通性が認められる。また、そうしたテーマが、著者それぞれの海外留学や研修体験によって設定された点も同じだった。両論文とも、学術論文として見れば、内容が「広く浅く」なり独自の考察を深めるには至らなかった点を、学生も教員も反省しなければならない。その上で、卒業論文作成を通じて各自の自由な問題設定から新たに学んだ内容と考えた経験を、今後もそれぞれ大切にしてほしいと思う。 |
キーワード1 | 寛容 |
キーワード2 | 多宗教 |
キーワード3 | 中世スペイン |
キーワード4 | ウマイヤ朝 |
キーワード5 | ユダヤ教徒 |
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