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学科 産業関係学科
年度 2010
ゼミ名 三山 雅子
タイトル 「世界の工場」を支える中国農民工の行方――「民工荒」という労働力不足現状――
内容 本論文は、「世界の工場」の主人公である農民工について論述した上で、民工荒問題を展開した。本論文は4章で構成されている。第1章では、本稿の意義と課題について述べた。第2章では、農民工について書いた。農民工は全体的人数規模が膨大で、増加する傾向にある。農民工の属性は、①主には青壮年男性である、②教育水準はかつては中学校卒がほとんどであったが、現在は高校及びそれ以上の教育を受けた人の割合が高まっている、③全体的な職業訓練率がまだ低い水準に止まっている、④主に製造業、建設業及びサービス業に従事している、⑤ほとんど労働者である。農民工は低賃金、賃金の遅延、長時間労働、労働契約の非締結、社会保険の未加入などの権利侵害問題に直面している。第3章では、民工荒(=労働力不足)は技能のある出稼ぎ労働者が少ないという問題から単純労働者も少ないことに変化したことを示した。最近の民工荒の特徴は、農民工の流入先が分散し、省内移動する農民工が増えたことである。民工荒の要因は、内需振興政策、農民工の世代交代、三農政策、満足できない労働条件、職業技能のある農民工の欠乏、人口構造問題、情報のミスマッチ問題である。民工荒に対する対策として、中国の経済発展モデルの転換、農民工の労働環境の改善、戸籍制度の改革が提案されている。最後の第4章はまとめである。
講評  社会科学的テーマならばOKということで、私のゼミでは卒論のテーマは4回生が自由に決めている。もちろんすんなりとテーマが決まることはあまりなく、二転三転してテーマが決まる。そこが、これまでの与えられたテーマで書くレポートと卒論の違いであろう。今年ゼミ生が卒論に選んだテーマは、日本農業の自立、ワーキングプア、ワーク・ライフ・バランス、日本の外国人労働者問題、医療崩壊、新規大卒者の就職、中国の農民工問題、格差社会等である。今の日本が、世界が見事に反映している。人生のスタート台にたった人たちの目にはこんな風に見える社会を、私たち大人は作り上げてきたのだ。私の卒論テーマはパートタイマー労働問題であったが、このテーマ群をみて思わず私は、今自分が22歳であったならば、何をテーマに卒論を書くのであろうかと思った。このように今という時代をつかまえる若い人たちのアンテナは確かであると思う。
 今はインターネットの時代である。たいていのことはネットであら調べができる時代である。図書館での文献検索であっても、かつてなら1週間はかかることが1~2日でできる時代である。さすがにレポートを山のように書いてきた産関の学生である、データにはあたっている。しかし、そこから先は、毎年のことではあるが千差万別であった。データの原典にあたり、原典のデータを自分で加工している学生もいれば、重引きしたデータで間に合わせている学生もいる人間は間違う存在であり、他人が作ったデータである既存データは間違っている場合もあるのである。既存データを使用することの怖さを知っていてほしいと思う。
 そして、先に触れたように今はインターネット時代である。だからこそ単にデータが扱われているだけではダメで、データを読み込んで自分なりにどう解釈したのか、つまりはデータとどう格闘したのか、データについての思索こそが問われると思う。この点についても、やはりよく考えた者とそうでなかった者との差は大きかった。これからあなた達が出ていくところは実社会であって学校ではない。失敗は即ダメージにつながりかねない場所だ。より深く考えることこそが武器であることを知っていてほしい。
キーワード1 農民工
キーワード2 民工荒
キーワード3 新生代農民工
キーワード4 戸籍制度
キーワード5  
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