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学科 産業関係学科
年度 2010
ゼミ名 石田 光男
タイトル 家族の在り方と伝統の意義
内容  私達の住む現代社会は、世界的に見ても『豊かな社会』であるとされている。しかし、その豊かな社会の裏では、少なくとも戦前までは存在していたはずの家族やコミュニティにおける絆の希薄化が問題となっており、それに誘発された社会問題も山積している。この病的現象から立ち直るためには、私達にとって最も身近な社会である家族の在り方を今一度考え直し、私達が豊かな社会を目指す中で捨て去ってきた伝統の意義について改めて確認することが必要である。そのためには、発展しきった現代社会においても未だに伝統を守り、家族や共同体を最重要視して生きている人々についてまず理解したい。
 彼らはアーミッシュと呼ばれ、オルドゥヌンクと呼ばれる三百年来の不文律に基づいて、文明機器の一切を拒絶して中世末期の生活を守り続けている。現代の日本の人々とアーミッシュの人々を対比することによって、私達が豊かさの代償として失った物は何であるのか、それはどういう意味で重要なのかについて考える。
 そして最後は、日本において保守思想を主張する西部邁氏の書籍に依拠して、日本における家族制度について考察し、再考する。
講評  卒業論文は一人一人の言葉の正しい意味での自己紹介だと思う。「わたしはこういう人間です」「これ以上でもこれ以下でもありません、私という人間は」ということをどうしても表現することになってしまうのが言葉の本性だからである。言葉遣いの現在の到達点、それが各人の卒業論文である。
 印象に残る良き作品について若干の言及をしたい。「先生と私」は卒論テーマが定まらずに困った末に、ゼミの先生の研究をきちんと理解しようとした、素直で学生らしいよい卒論である。それも研究方法、研究態度を追いかけているのが優れている。私が何故、政策的指南を行わないのかをよく理解しようとし、その上で、にもかかわらず、私の研究は「生き方を指南している」という結論は鋭い。「教員組合のあるべき姿」は、わからないことを当事者にあたって調べるという産業関係論の実証的精神をよく体現した力作である。その心構えがよい。「感情と経験を言葉にする」は、西部氏の『人間論』をしっかり自分なりに読み込む努力が、通常の学生にない真摯さに貫かれていて私のような年配者に「もっと議論してください」と訴えているようで、誠に好感のもてる作品である。「グローバル社会で生き抜くための人材戦略」は私が唱える日本の伝統的人的資源管理の美点への「惑溺」的欠陥を若い世代の視点から覆そうとする、切迫感がすばらしい。心のこもった作品である。
 また、最も嬉しかった作品は「日本の人事・賃金制度の歴史」である。何事にも無関心で無気力な同君が「私はこんなに変わりました」ということを喜びに満ちて表現しているからだ。教育をしていてめったに出会えなかった喜びだ。私が励ましを得た貴重な作品である。
 偽りのない自分の到達点としての卒業論文を直視して、そこから自らの研鑽を積み上げていって欲しい。
キーワード1 豊かな社会
キーワード2 コミュニティ
キーワード3 家族制度
キーワード4 保守思想
キーワード5  
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