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学科 | 社会福祉学科 |
年度 | 2010 |
ゼミ名 | 野村 裕美 |
タイトル | 自分らしく生きるために~子ども時代の病気という躓きから考える~ |
内容 | この論文の問いは,病気体験をした子どもが感情表出をできる大人になるためには,どのような環境が必要なのかということが最大の問いである. 病気体験をした子どもは,どのようなリスクに脅かされているのか,また,何を必要としているのかということを視点としている. 病気体験をした子どもが,感情の抑圧や強制される身体的我慢を原因に感情表出をうまくできず,甘えられない大人に成長していくという仮説をもとに展開していく.子どもは,家庭との分離の不安や治療の恐怖などに脅かされ,甘える場を失っていたことから,甘えの場が必要だというニーズに辿り着いた. 土居の甘えの定義を基盤に,母親や医療者が子どもにどのような対応が出来るかを文献から整理した.その結果,子ども時代に甘えを獲得するためには,素直に笑みがこぼれる安心できる場所が必要だということがわかり,遊びが甘えの空間を作り出すという結論に達し,そのニーズに応えることのできる専門家について述べている. また,子ども時代だけでなく,成長後の内なる子どものケアについても言及・考察した. |
講評 | 自らの子ども時代の病気体験と向き合うことで、単に闘病手記では終わらない論文に仕上がりました。「向き合う」という言葉では一見たやすいイメージを与えてしまうかもしれませんが、筆者は自分という一つの事例についてライフヒストリーを丁寧にたどり、土居建郎の「甘え」の概念を機軸に非常に客観的な考察をやり遂げました。論題を絞る段階で、小児科領域におけるソーシャルワークをやりたいと彼女は希望してきましたが、私はそれに強く抵抗しました。春からソーシャルワーカーとして現場に出て行く筆者には、4年間の集大成として、壮絶だったかもしれない自分と病気の歴史について、きれいにオブラートに包んで終わるのではなく、単なる闘病手記として一方的に語り捨てて終わるのでもなく、対人援助の専門家となる一歩として、卒論作成の機会を有効に使ってもらいたかったからです。彼女の力を信じて非常に酷なことを要求しましたが、狭義の意味の自己覚知(専門家に向いているかいないか)ではなく、自己活用(自分という道具をよく知って、いろんな面を活かしていける)の姿勢を身につけた専門家としての証を残すことができました。「笑みがこぼれる場つくりが甘えの空間を作り出す」という考察は、彼女らしい着地点の一つです。笑みが自然とこぼれてくるソーシャルワーカーであってほしいと思います。 |
キーワード1 | 癌 |
キーワード2 | レジリエンス |
キーワード3 | 甘え |
キーワード4 | |
キーワード5 | |
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