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学科 | 社会学科 |
年度 | 2011 |
ゼミ名 | 藤本 昌代 |
タイトル | 京都の銭湯における実状調査 |
内容 | 本稿は、近年、廃業が続く銭湯業の中で京都の銭湯に着目し、銭湯業に関わる人々のつながりについて研究したものである。分析視点は、銭湯の地域のコミュニティ的役割が、現在も機能しているのか、京都で銭湯業を始めた石川県出身者らによる同郷団体ネットワークが、現在も根強く残っているのかということである。これらを明らかにするために本研究では、下京区にある二軒の銭湯へのインタビュー調査、京都市四区の銭湯への調査と京都府公衆浴場業生活衛生同業組合の理事へのインタビューを行った。これらの調査の結果、利用客数は大幅に減少しているものの、利用する人にとっては地域の社交場としての銭湯が残っていることがわかった。 また、経営者のネットワークには変化が見られ、これまでほとんどの経営者が石川県出身であるという構造が崩れ、創業者が石川県出身ではない、京都出身者による銭湯の割合が増加していることが判明した。また祖父世代に石川県出身者をもつ銭湯経営者の多くは「同郷」という意識が低下し、以前よりも銭湯同士による関わりが薄れつつあることが明らかになった。 |
講評 | 本論文は、近年、家風呂だけでなく、スーパー銭湯などに顧客を奪われ、ますます厳しい状況下にある個人経営の銭湯の現状に着目し、地域での必然性が下がった中でどのように生き残りを図っているのかという問題設定から始められたものである。本研究は、先行研究以上の知見を得るのに苦労していたが、インタビュー対象者であった2軒の銭湯の経営者が、共に石川県出身者ではない人々によって始められた銭湯の後継者であったことから、先行研究で発見された「石川県人の同郷ネットワーク」が変化しているのではないかという新たな仮説を生み出し、調査しながら発展していった。 学部生にとって一般の人々へのインタビューを自分の力で開拓していくのは、非常に困難で勇気の必要なことであるが、本調査は筆者が全ての銭湯に対して独力で調査協力を得た労作である。調査の結果は石川県出身者を創業者に持つ銭湯が依然として多かったが、石川県出身者以外の銭湯も一定数あることが見出された。そして重要なことはその同郷ネットワークは、孫世代になり、技術的、経営的相互扶助の必然性がなくなり、ネットワークが形骸化していることを発見したことも大きい。 また、もはやコミュニティとして成立が難しいと考えられがちな銭湯での利用客の関係も、地域全体の交流の場としての役割は果たしていないが、利用客同士の交流は小規模ながら維持されており、昔の機能がなくなったのではなく、縮小された中で維持されているという発見もなされ、面白い仕上がりになっている。 |
キーワード1 | 京都 |
キーワード2 | 銭湯 |
キーワード3 | 同郷ネットワーク |
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