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学科 | 社会学科 |
年度 | 2011 |
ゼミ名 | 藤本 昌代 |
タイトル | 精神科看護師の看護観 ―単科精神科病院での参与観察を通じて― |
内容 | 「看護とはこうすべきものだ」という看護師の認識が「看護観」であるが、看護の世界でよく語られる看護観とはどのようなものなのか。本稿では、単科精神科病院における精神科看護師の看護観について、インタビューと参与観察を行い、看護観の類型化と看護師間での看護観の違いによる葛藤を明らかにした。 精神科看護師の看護観は、患者との「心理的距離」と、患者の「心理的依存と自立」に重点が置かれていた。看護観の違いによる葛藤では、患者の社会復帰を目的とする病棟の看護師において、患者の「心理的依存」をどれほど許容するかにおいて葛藤が見られた。看護観の違いによる葛藤に対しては、「看護という正解のない行為」であることが、自身の看護が正しいわけではなく、看護観が異なることで、様々な患者のニーズに対応することができると考え、看護観の違いを肯定的に捉えていた。 さらに、看護観の違いによる葛藤の場であるカンファレンスは、話し合いによる解決の場でもあり、病棟のスケジュールとして定期的に組み込まれていることで、早期に対処する場であった。 |
講評 | 本論文は、看護師という専門職集団の中に入り、参与観察によって書かれたものである。看護師の専門性、担当部署の特性、転職による経験知の広がりなど、医療従事者でなければ知り得ないような深い内容まで、丁寧に聞き取り、記述されているため、非常に密度の濃い論文に仕上がっている。仮説として挙げられた看護師の専門性が反映された看護観がコンフリクトを起こすのではないかということについては、自身の専門分野に強い思い入れをもつ専門職の特性を考えると、十分考えられるものであった。 しかし、調査の結果、彼らの間にはコンフリクトはなく、それぞれの専門性へのこだわり以上に、現場の患者との関係性が難しいこと、転職経験者の経験知による異なる視点を認めるなど、現場の緊迫感、条件適応的な対応の必要性が強いということが明らかになり、それにより意地を張るより柔軟性が重要であるという規範が現場で共有されていることが発見された。専門分野の説明、先行研究の研究経緯と自身の問題意識との関係性の明示化、調査内容の記述、考察と丁寧に論理的に書き込まれた秀作である。 |
キーワード1 | 看護師 |
キーワード2 | 参与観察 |
キーワード3 | 心理的距離 |
キーワード4 | |
キーワード5 | |
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