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学科 教育文化学科
年度 2011
ゼミ名 越水 雄二
タイトル 『ミリオンぶっく』にみるロングセラー絵本の特性 ― 絵本研究の客観的な基礎作りへ向けて ―
内容  本論文では、絵本研究が未だ発達段階にあるという現状から、論理的な絵本研究を考えることを目的とする。その手掛かりとして、「ロングセラー作品の支持」という絵本の特徴に注目した。今回検討する『ミリオンぶっく』2011年度版は、累計発行部数が100万部以上、およびまもなく100万部に達する絵本全115点を掲載したリーフレットである。
 第1章では考察の前提として、戦後日本の絵本史を概観しながら絵本観の変遷をたどる。続く第2章で『ミリオンぶっく』より導かれる独自データの分析にあたる。和書と洋書の内訳と詳細、初版発行年代と年平均発行部数、対象年齢、価格・頁数・サイズ、主人公、内容ジャンルの6点を検討項目とした。
 最終的に絵本研究の課題は、本格的な学問構築に向けて、素地となる客観的資料を確立させることにあると考える。一方で未開拓であるという現況は、論議が積極的に積み上げられていくという今後への可能性でもある、との結論に至った。
講評  今年度は3名が卒業論文を提出した。それらの特徴は、以下のように紹介できる。
西洋における〈余暇〉をテーマにした論文は、それを知的な指導者や思想家がどのように考えてきたかとともに、多くの人びとがどのように余暇を過ごしていたかも明らかにして、すなわち、余暇をめぐる思想史と、社会史的研究による実態の変遷とを辿り、それらを総合した余暇の〈文化〉史を目指す試みである。古くはユダヤ教・キリスト教の安息日から、20世紀のヴァカンス政策までを視野に収めた内容で、考察が「浅く広く」なった面はやむを得ないが、近年の社会史研究の諸成果を積極的に活用して、従来の西洋教育史研究が扱ってこなかった人間形成に関わる重要な側面に取り組んでおり、〈教育文化研究〉として今後のさらなる進展が期待されると思う。
 ドイツとフランスで共同製作された教科書から、国家に囚われず〈歴史認識〉を共有する可能性とその課題をテーマにした論文は、共通歴史教科書が両国の後期中等教育段階の学校現場で実際にはまだ広く普及していないにしても、歴史の解釈および研究の原理、学校での歴史教育の方法、ドイツとフランスの文化交流史といった問題はもちろん、今後の日本と近隣アジア諸国との関係を考えることにもつながっていく内容である。時間に余裕があれば、共通教科書の検討を、どちらか1国の教科書と自分の目で比較して行うことで、より考察が深められただろう。
 〈絵本研究〉をテーマにした論文は、前年度までは図書館(学校図書館)学のゼミで学んでいた学生が、本年度、担当教員の転出に伴いこのゼミで作成したものである。研究対象が戦後日本のロングセラー作品であったため、卒論作成の過程で、西洋教育文化史ゼミの学生や教員とも各自の読書経験をもとに意見を交換しやすかったのは幸いだった。本論文は1万字でまとめられたが、特定の作品あるいは作家論ではなく、また読書教育論でもなく、絵本に関する客観的なデータに基づいて、文化の一つの媒体としてその特質を解明しようとする意欲的な試みである。
 以上3論文の執筆の指導を通じて、私教員の私にも多くの学びがあったことに感謝している。
キーワード1 ロングセラー
キーワード2 絵本
キーワード3 絵本研究
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