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学科 教育文化学科
年度 2011
ゼミ名 越水 雄二
タイトル 西洋余暇文化史への試み―思想と実態の変化から―
内容  西洋の余暇に関して、現在日本では思想史および社会史的研究はなされている。しかしそれらを総合し、人々の余暇の全体像を捉える研究に関してはまだあまりなされていない。そこで私は、余暇の思想と実態を全体的にとらえる研究を「西洋余暇文化史」と名付け、この論文で試みる。論文の構成は、思想と実態の両面について、①ユダヤ・キリスト教の安息日、②宗教改革とピューリタニズム、③啓蒙主義とロマン主義、④社会政策的措置、という4つの文化・社会事象で節を分けてその変化を辿っていく。以上のような流れで現代に至るまでの西洋における余暇の意味づけの変化を解き明していけば、現代に生きる我々がどのように余暇と向き合っているかを見つめなおす機会を得られるだろう。
講評  今年度は3名が卒業論文を提出した。それらの特徴は、以下のように紹介できる。
西洋における〈余暇〉をテーマにした論文は、それを知的な指導者や思想家がどのように考えてきたかとともに、多くの人びとがどのように余暇を過ごしていたかも明らかにして、すなわち、余暇をめぐる思想史と、社会史的研究による実態の変遷とを辿り、それらを総合した余暇の〈文化〉史を目指す試みである。古くはユダヤ教・キリスト教の安息日から、20世紀のヴァカンス政策までを視野に収めた内容で、考察が「浅く広く」なった面はやむを得ないが、近年の社会史研究の諸成果を積極的に活用して、従来の西洋教育史研究が扱ってこなかった人間形成に関わる重要な側面に取り組んでおり、〈教育文化研究〉として今後のさらなる進展が期待されると思う。
 ドイツとフランスで共同製作された教科書から、国家に囚われず〈歴史認識〉を共有する可能性とその課題をテーマにした論文は、共通歴史教科書が両国の後期中等教育段階の学校現場で実際にはまだ広く普及していないにしても、歴史の解釈および研究の原理、学校での歴史教育の方法、ドイツとフランスの文化交流史といった問題はもちろん、今後の日本と近隣アジア諸国との関係を考えることにもつながっていく内容である。時間に余裕があれば、共通教科書の検討を、どちらか1国の教科書と自分の目で比較して行うことで、より考察が深められただろう。
 〈絵本研究〉をテーマにした論文は、前年度までは図書館(学校図書館)学のゼミで学んでいた学生が、本年度、担当教員の転出に伴いこのゼミで作成したものである。研究対象が戦後日本のロングセラー作品であったため、卒論作成の過程で、西洋教育文化史ゼミの学生や教員とも各自の読書経験をもとに意見を交換しやすかったのは幸いだった。本論文は1万字でまとめられたが、特定の作品あるいは作家論ではなく、また読書教育論でもなく、絵本に関する客観的なデータに基づいて、文化の一つの媒体としてその特質を解明しようとする意欲的な試みである。
 以上3論文の執筆の指導を通じて、私教員の私にも多くの学びがあったことに感謝している。
キーワード1 余暇
キーワード2 文化史
キーワード3 キリスト教
キーワード4 啓蒙主義
キーワード5 社会政策
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