詳細
学科 教育文化学科
年度 2011
ゼミ名 越水 雄二
タイトル 独仏共通歴史教科書が目指す歴史認識の共有-自国中心主義をどう越えるか-
内容  本稿では、長年対立してきた国家同士を、和解に導いた歴史教科書に焦点をあてたい。その例として独仏共通歴史教科書が挙げられる。本書は両国のわずか500名ほどの高校生の提言によって製作され、2006年に出版が実現した画期的な教科書である。
二国間ないし多国間で「和解」や歴史に対する「共通理解」を目指す歴史教科書を作製する場合に最も大切な問題は、「自国中心主義をどのように乗り越えるか」である。したがって本稿では、独仏共通教科書の構成や特徴、記述を詳しく分析し、その内容が、「自国中心主義を乗り越える」ことを達成できているか否かを考察することを通じて、これからの歴史教科書の展望を得たい。
 第一章では、独仏共通教科書が成立するまでの背景について言及し、第二章では、本書の構成とその特徴について検討し、具体的にその中から1つの章を取り上げ、分析したのち、利用者や関係者からの評価と批判をふまえて、考察したいと考えている。
講評  今年度は3名が卒業論文を提出した。それらの特徴は、以下のように紹介できる。
西洋における〈余暇〉をテーマにした論文は、それを知的な指導者や思想家がどのように考えてきたかとともに、多くの人びとがどのように余暇を過ごしていたかも明らかにして、すなわち、余暇をめぐる思想史と、社会史的研究による実態の変遷とを辿り、それらを総合した余暇の〈文化〉史を目指す試みである。古くはユダヤ教・キリスト教の安息日から、20世紀のヴァカンス政策までを視野に収めた内容で、考察が「浅く広く」なった面はやむを得ないが、近年の社会史研究の諸成果を積極的に活用して、従来の西洋教育史研究が扱ってこなかった人間形成に関わる重要な側面に取り組んでおり、〈教育文化研究〉として今後のさらなる進展が期待されると思う。
 ドイツとフランスで共同製作された教科書から、国家に囚われず〈歴史認識〉を共有する可能性とその課題をテーマにした論文は、共通歴史教科書が両国の後期中等教育段階の学校現場で実際にはまだ広く普及していないにしても、歴史の解釈および研究の原理、学校での歴史教育の方法、ドイツとフランスの文化交流史といった問題はもちろん、今後の日本と近隣アジア諸国との関係を考えることにもつながっていく内容である。時間に余裕があれば、共通教科書の検討を、どちらか1国の教科書と自分の目で比較して行うことで、より考察が深められただろう。
 〈絵本研究〉をテーマにした論文は、前年度までは図書館(学校図書館)学のゼミで学んでいた学生が、本年度、担当教員の転出に伴いこのゼミで作成したものである。研究対象が戦後日本のロングセラー作品であったため、卒論作成の過程で、西洋教育文化史ゼミの学生や教員とも各自の読書経験をもとに意見を交換しやすかったのは幸いだった。本論文は1万字でまとめられたが、特定の作品あるいは作家論ではなく、また読書教育論でもなく、絵本に関する客観的なデータに基づいて、文化の一つの媒体としてその特質を解明しようとする意欲的な試みである。
 以上3論文の執筆の指導を通じて、私教員の私にも多くの学びがあったことに感謝している。
キーワード1 独仏共通歴史教科書
キーワード2 国際教科書改善
キーワード3 歴史教科書
キーワード4 歴史認識
キーワード5 自国中心主義
戻 る
Copyright (C) Doshisha University All Rights Reserved.