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学科 産業関係学科
年度 2011
ゼミ名 上田 眞士
タイトル 日本の少子化事情 -各国との比較を通して-
内容  本論文では、日本の少子化の原因を考察し、その上で様々な国の少子化事情、原因と比較していく中で、日本における少子化の解決策を探っていくものである。本論文において、日本の少子化の原因は①収入の不安定化 ②結婚、子育ての期待水準と現実との不一致 ③女性の社会進出度に対する公的保育サービスの不備 であるとした。少子化の原因を明らかにした後、少子化の進行具合という点において日本と酷似している国、酷似していたが、回復した国という二種類に分けて日本と比較、考察を行った。その中で、日本と少子化の進行具合が酷似している国には多くの共通点が見つかり、また回復した国でも、その国々同士での共通点が見つかった。日本と酷似している国では、先に述べた①②③の全てが当てはまり、回復した国では公的保育サービス、育児補助政策の充実が共通点として挙がった。更に、共通点として移民を受け入れている事も指摘し、移民の多産傾向が出生率を底上げしていると指摘した。移民の特徴は導入後、生産人口の増加という形で迅速に効果が表れ、そして一旦受け入れればその撤回が難しい点にあるとし、現時点の日本では生産人口の深刻な減少には至っていない事から、現段階では移民を受け入れるのではなく、少子化から回復した国に習って公的保育サービス、育児補助政策の充実を目指してくべきであると結論付けた。
講評 卒論テーマについては「できうる限り,広く雇用社会のありように関わる事柄から選択するように」,年度のはじめにそうした土俵の設定を行いました。提出して貰った論文テーマを列挙してみると,「未婚化や少子化対策」「若年者の雇用問題」「非正規雇用と格差社会」「ベーシック・インカムの可能性」「拡大する日本の貧困問題」「銀行業務とホスピタリティ」「看護師の労働と転職」等々となっています。これらのテーマを一瞥しただけで,現代日本の雇用社会のありようや,その抱える問題が浮かび上がってきます。卒論作成という課題に対して,ゼミ生皆が誠実に取り組んでくれた結果である,基本的にそのように考えて良いでしょう。しかし,その上で卒論を読んでみて,いくつか頭に想い浮かんできた事柄もあります。どういう論文が良い論文なのか,私なりに大事だと思うポイントを二つほど記しておきたいと思います。

一つには,論文の内容にかかわって,「批判的」な研究であって欲しい,そうした要望です。現代の雇用社会の住人である我々が,その雇用社会の一断面を取り上げ,現に存在するものを正面から受け止めようとするわけだから,そこでは必ず何らかの課題意識や問題意識が生まれてくるはずです。そうした現実に対して抱く緊張感を,論理的に整序して記述しようする姿勢が,論文にとってはかなり大事なことだと思います。本質的に批判的な学問であること,それが社会科学の生命線だという命題は,決して私一人の独善ではありません。それから,いま一つは,論文の基本的な作法についての事柄です。言いたいことは,自らが設定した「対象」と,それに対して分析や論評を加えていく「自分」,この二つの距離感を論述に際してはきちんと保って欲しい,それがしっかりとした記述かどうかを分かつ大事なポイントとなるだろうということです。例えば,企業や経営を対象とする場合,その企業経営の目線や言葉は,言うまでもなくビジネス=「実践」の世界の目線や言葉です。他方,論文での目線や言葉は,それとは異質な「学問」の目線や言葉でなくてはならないでしょう。たしかにその他にも論文には,幾つかの重要な叙述の形式がありますが,以上の基本が確保できていれば,後は技術的な問題ということになると思います。

とはいえ,「言うは易く行うは難し」というのが,先人の残した金言です。はじめて書く論文である卒論を,私なりに大切だと思う上述の二点を基準に,ばっさりと裁断したつもりは全くありません。論文を執筆する際の「心がけ」だと考えて欲しい,そのように思います。
キーワード1 少子化
キーワード2 未婚化
キーワード3 晩婚化
キーワード4 家族政策
キーワード5 パラサイトシングル
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