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学科 産業関係学科
年度 2011
ゼミ名 上田 眞士
タイトル なぜ人は転職するのか
内容  今まで長期雇用には使用者にも雇用される労働者にもメリットがあると考えてきた。しかし、本当に長期雇用にはメリットばかりで、途中でその会社を辞め転職を行うことにメリットはないのか、また、転職することにメリットがないのならば、どうして人は転職するのだろうか。私は今までの勉強を通して、ここに疑問を持ってきた。そこで、転職について勉強してみることにした。その結果、転職を経験している労働者は想像以上に多く、転職によって賃金が上昇し、転職後の職場に満足している人もいた。しかし若い年齢時に転職したとしても1200万以上も生涯賃金に差が出てくるといった試算もあるほど転職にはコストがかかる。また、キャリア育成という観点からも、キャリアはその会社でしか築けないものであり、転職にはデメリットとなる部分も大きい。それにもかかわらず、なぜ人は転職するのか。それには年功序列制度が崩壊し、賃金面でも、働きがいという面でも報われない人が多い。そのため、その会社での自分の将来を見限り転職している人が多いと分かった。だとすれば、会社の労働環境を整備し、働きやすい、働きがいのある職場をつくることが出来れば人は転職しなくなるはずだ。そのほうが労使双方にもメリットがあるはずである。労働環境を整備すると言っても何も難しい事をする必要はない。お互いの仕事を認知し、お互いに賞賛し合うということだけで人は自分が必要とされていると感じ、そこに働きがいを見出す。これだけのことで離職・転職といった流れを止め、労使双方に望ましいであろう長期的に一つの会社で働ける環境が生まれるはずである。
講評 卒論テーマについては「できうる限り,広く雇用社会のありように関わる事柄から選択するように」,年度のはじめにそうした土俵の設定を行いました。提出して貰った論文テーマを列挙してみると,「未婚化や少子化対策」「若年者の雇用問題」「非正規雇用と格差社会」「ベーシック・インカムの可能性」「拡大する日本の貧困問題」「銀行業務とホスピタリティ」「看護師の労働と転職」等々となっています。これらのテーマを一瞥しただけで,現代日本の雇用社会のありようや,その抱える問題が浮かび上がってきます。卒論作成という課題に対して,ゼミ生皆が誠実に取り組んでくれた結果である,基本的にそのように考えて良いでしょう。しかし,その上で卒論を読んでみて,いくつか頭に想い浮かんできた事柄もあります。どういう論文が良い論文なのか,私なりに大事だと思うポイントを二つほど記しておきたいと思います。

一つには,論文の内容にかかわって,「批判的」な研究であって欲しい,そうした要望です。現代の雇用社会の住人である我々が,その雇用社会の一断面を取り上げ,現に存在するものを正面から受け止めようとするわけだから,そこでは必ず何らかの課題意識や問題意識が生まれてくるはずです。そうした現実に対して抱く緊張感を,論理的に整序して記述しようする姿勢が,論文にとってはかなり大事なことだと思います。本質的に批判的な学問であること,それが社会科学の生命線だという命題は,決して私一人の独善ではありません。それから,いま一つは,論文の基本的な作法についての事柄です。言いたいことは,自らが設定した「対象」と,それに対して分析や論評を加えていく「自分」,この二つの距離感を論述に際してはきちんと保って欲しい,それがしっかりとした記述かどうかを分かつ大事なポイントとなるだろうということです。例えば,企業や経営を対象とする場合,その企業経営の目線や言葉は,言うまでもなくビジネス=「実践」の世界の目線や言葉です。他方,論文での目線や言葉は,それとは異質な「学問」の目線や言葉でなくてはならないでしょう。たしかにその他にも論文には,幾つかの重要な叙述の形式がありますが,以上の基本が確保できていれば,後は技術的な問題ということになると思います。

とはいえ,「言うは易く行うは難し」というのが,先人の残した金言です。はじめて書く論文である卒論を,私なりに大切だと思う上述の二点を基準に,ばっさりと裁断したつもりは全くありません。論文を執筆する際の「心がけ」だと考えて欲しい,そのように思います。
キーワード1 転職
キーワード2 長期雇用
キーワード3 キャリア形成
キーワード4 働きがい
キーワード5  
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