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学科 メディア学科
年度 2012
ゼミ名 渡辺 武達
タイトル 反復芸術の現代的価値の研究  ~草間彌生作品を例に~
内容  この論文では、ここ数年において民間人に急速に名を知られるようになった日本人アーティスト「草間彌生(くさまやよい)」の作品が、なぜアート界のみならず大衆にも受け入れられているのかという理由を考察する。そして草間彌生の作品価値の大部分が、彼女の作品のキーワードともいえる、モチーフの「反復」表現に依拠しているという仮定の下、三つの結論が出た。一つ目には、①精神病(彼女が無限の水玉模様や網模様を描く直接的な原因である)による幻覚症状を芸術に昇華させているというめずらしさ(・・・・・)が商品としての彼女の作品価値を高めているということ。二つ目には、②その「反復」・「増殖」していくモチーフが極めて仏教的な思想を連想させることから、日本人のエートスを、さらには近年特に日本文化に友好的である外国人のエートスを捉えているのではないかということ。そして最後に、③精神病を患う人が多い現代社会においてこそ、精神病患者の彼女の作品が―そして彼女自身の生き様が―理解されるようになったのではないかということ、の三点である。
講評 筆者は4回生になってからアドルノの複製芸術論に興味を持ち、美学とコミュニケーション問題に取り組んできた。その流れのなかで、ここ数年、正当な芸術思想として位置づけられるようになった日本人アーティスト、草間彌生の作品を「反復芸術」としてとらえ、その訴えかけと受容/需要の形を分析するようになった。本論文ではなぜ草間の前衛的アートが大衆にも受け入れられ、現代アートとして認知されるようになったかの理由を考察し、①精神的特異性ともいえる水玉模様反復の継続が仏教の輪廻思想に繋がり、ときとして心を病む現代人の処方箋として受け入れられやすくなったのだと主張する。哲学/美学的問題にメディア学からアプローチを試みた試論であり、今後の展開に期待できる。
キーワード1 草間彌生
キーワード2 芸術
キーワード3 反復
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