詳細 | |
---|---|
学科 | 産業関係学科 |
年度 | 2012 |
ゼミ名 | 寺井 基博 |
タイトル | 技術流出と成果主義 |
内容 | 技術流出は複雑な要因が絡み合った根の深い問題である。だがこれを、労働者と企業の問題であると捉えるならば、労使関係論の枠組みを用いた考察が可能だ。本論文では、技術流出が顕在化するまでの時代的背景を整理するために、まずは「失われた20年」についての分析を試みた。「失われた20年」とは先行き不透明な時代であり、企業にとっては人件費の抑制が求められた時代であった。事実、この時期に導入が進んだ成果主義は人件費抑制という意図を孕んでいた。 成果主義における成果給は、経営目標に対する労働者の貢献に対して支払われる報酬である。成果主義は経営トップから個々の労働者への働きかけを従前よりダイレクトに無駄なく機能させるための仕掛けなのである。しかしながら、トップの設定する経営目標が常に無謬なわけでは決してない。だからこそ成果給からは「目標と無関係な貢献」に対する報酬が抜け落ちやすい。本論文では日亜化学工業事件という事例を取り扱う中で、現場の仕事管理に対して、時に経営目標の側が真心をもって配慮をしなければならないことがあると気付かされた。経営目標に「将来の成功の種」を余すことなく盛り込むことは不可能に近いのではないだろうか。 |
講評 | 提出論文のタイトルは、「労働契約法の制定過程と労使関係」「職人の技能継承」「ベーシックインカムに対する期待の検討」「日本の人事制度の変遷」「フィリピンの住居政策とパシッグ・リバー・プロジェクトの現状」「奈良県と京都市における廃校利活用の実態と課題に関する研究」等々。一瞥してわかるとおりテーマは自由とした。関心のあるテーマならば全力で取り組むことができるのではないかと考えたためだ。学生への事前指導として、目新しいことを書こうとせずに、自分が選んだテーマについて考え抜いたことを書くように勧めた。 自分の考えを書くといっても、まずは先行研究を読んで、議論の枠組みや主要な論点を把握しなければならない。論文の作法として、他者と自己との見解を峻別しなければならない。すると、複数の学生から同じような質問が寄せられる。先行研究の中ですでに書かれてしまっているので、この上「自分の考え」として何を書けばよいのかという内容だ。答えは明瞭である。先行研究の記述をどのように理解し評価したかを書けばよい。これらの作業そこが分析であり、読み手の考えに他ならない。文献研究が単なるコピー&ペーストとならない所以である。 提出された論文は、実証的なもの、思索的なもの、地道な努力が光るもの、苦悶の跡が窺われるものなど多彩であったが、いずれもそこには「現在の自分」が現れている。確かに、考察が不十分なところや論理展開がやや強引なところなど、荒削りな面はある。しかし、筆者の思いが切々と綴られた部分は、自ずと読む者を惹きつける。それは自分自身との対話の深さによるものだろう。 卒業論文の自分を起点として、社会人として新たなスタートを切ってもらいたい。 |
キーワード1 | 技術流出 |
キーワード2 | 企業忠誠心 |
キーワード3 | 経営目標 |
キーワード4 | 仕事管理 |
キーワード5 | 目標と未関係な貢献 |
戻 る |