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学科 産業関係学科
年度 2012
ゼミ名 寺井 基博
タイトル 定年後に働くということ―日本人の国民性から考える―
内容  近年、多くの企業が定年延長を進めている。OECDの文献によれば、日本は「早期引退、ハッピーリタイヤメント」志向が強い欧米などと比較して、高齢になっても働き続けることへの抵抗感が少なく、高齢者の就業意欲は高いようだ。ということは日本人は40年以上も働き続けたにもかかわらず、さらに日本人は働いているということになるのである。これは一体どういうことか。定年後になぜ人は、いや日本人は、まだ働くのだろうか。
 ここでは欧米のような海外にはない日本独特の文化や国民性が原因ではないかと考えた。そこから日本人はもともと勤勉なわけではなく、国民性によって仕方なく勤勉にならざるを得なかったこと、そしてもとから労働に対してマイナスイメージが強い労働観ということが分かった。それでもなお働き続けたいというのは、仕事を通して何らかのプラスのイメージをもつ経験をしたからではないか。そして「働いている」という役割を全うすることが生きがいにつながるのではないか。
講評 提出論文のタイトルは、「労働契約法の制定過程と労使関係」「職人の技能継承」「ベーシックインカムに対する期待の検討」「日本の人事制度の変遷」「フィリピンの住居政策とパシッグ・リバー・プロジェクトの現状」「奈良県と京都市における廃校利活用の実態と課題に関する研究」等々。一瞥してわかるとおりテーマは自由とした。関心のあるテーマならば全力で取り組むことができるのではないかと考えたためだ。学生への事前指導として、目新しいことを書こうとせずに、自分が選んだテーマについて考え抜いたことを書くように勧めた。
自分の考えを書くといっても、まずは先行研究を読んで、議論の枠組みや主要な論点を把握しなければならない。論文の作法として、他者と自己との見解を峻別しなければならない。すると、複数の学生から同じような質問が寄せられる。先行研究の中ですでに書かれてしまっているので、この上「自分の考え」として何を書けばよいのかという内容だ。答えは明瞭である。先行研究の記述をどのように理解し評価したかを書けばよい。これらの作業そこが分析であり、読み手の考えに他ならない。文献研究が単なるコピー&ペーストとならない所以である。
提出された論文は、実証的なもの、思索的なもの、地道な努力が光るもの、苦悶の跡が窺われるものなど多彩であったが、いずれもそこには「現在の自分」が現れている。確かに、考察が不十分なところや論理展開がやや強引なところなど、荒削りな面はある。しかし、筆者の思いが切々と綴られた部分は、自ずと読む者を惹きつける。それは自分自身との対話の深さによるものだろう。
卒業論文の自分を起点として、社会人として新たなスタートを切ってもらいたい。
キーワード1 定年後
キーワード2 高齢者
キーワード3 国民性
キーワード4 マイナスイメージ
キーワード5 労働観
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