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学科 産業関係学科
年度 2012
ゼミ名 寺井 基博
タイトル ベーシックインカムに対する期待の検討
内容 近年、長引く不況や世界的な経済危機の影響などで、日本でも雇用問題や貧困問題が問題視され社会的な関心や懸念も大きくなっている。そうした中で、ベーシックインカムという考え方が注目されている。ベーシックインカムとは、国民(あるいは住民)全員に対して一定額の所得給付を行う構想のことである。貧困が問題視され始めた日本では、セーフティネットとしての生活保護が機能不全に陥っているとして、全員に一定の所得を保障するベーシックインカムが注目される。生活保護の捕捉率が低いといわれるなかで、ベーシックインカムは全員の生存権を保障することができると考えられるためである。一方で、ベーシックインカムには、フリーライダーを助長し人々が働かなくなる、あるいは全員に一定の額を給付する莫大な財源はどうするのかといった批判もある。これらの問題に対し、ベーシックインカム論者らは解決策を見出せていない。また、ベーシックインカムの導入は大きな制度の変革を伴うこともあり、実現するのは困難である。しかし、そうであっても、生存権の一律保障は重要なことであり、その手段としてのベーシックインカムの議論は意義があると結論付ける。
講評 提出論文のタイトルは、「労働契約法の制定過程と労使関係」「職人の技能継承」「ベーシックインカムに対する期待の検討」「日本の人事制度の変遷」「フィリピンの住居政策とパシッグ・リバー・プロジェクトの現状」「奈良県と京都市における廃校利活用の実態と課題に関する研究」等々。一瞥してわかるとおりテーマは自由とした。関心のあるテーマならば全力で取り組むことができるのではないかと考えたためだ。学生への事前指導として、目新しいことを書こうとせずに、自分が選んだテーマについて考え抜いたことを書くように勧めた。
自分の考えを書くといっても、まずは先行研究を読んで、議論の枠組みや主要な論点を把握しなければならない。論文の作法として、他者と自己との見解を峻別しなければならない。すると、複数の学生から同じような質問が寄せられる。先行研究の中ですでに書かれてしまっているので、この上「自分の考え」として何を書けばよいのかという内容だ。答えは明瞭である。先行研究の記述をどのように理解し評価したかを書けばよい。これらの作業そこが分析であり、読み手の考えに他ならない。文献研究が単なるコピー&ペーストとならない所以である。
提出された論文は、実証的なもの、思索的なもの、地道な努力が光るもの、苦悶の跡が窺われるものなど多彩であったが、いずれもそこには「現在の自分」が現れている。確かに、考察が不十分なところや論理展開がやや強引なところなど、荒削りな面はある。しかし、筆者の思いが切々と綴られた部分は、自ずと読む者を惹きつける。それは自分自身との対話の深さによるものだろう。
卒業論文の自分を起点として、社会人として新たなスタートを切ってもらいたい。
キーワード1 ベーシックインカム
キーワード2 生存権
キーワード3 フリーライダー
キーワード4 財源
キーワード5  
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