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学科 産業関係学科
年度 2012
ゼミ名 冨田 安信
タイトル 「大学全入時代における大学進学の利益-学歴社会は存在するのか-」
内容 日本において学歴社会は今でも存在するのであろうか。学歴社会はどのような原理で成り立ち、また、学歴の利益はどのようなものなのか、「学歴」について経済学の面から考えた。高卒者と大卒者の間に賃金格差があり、日本において学歴社会は存在している。しかし、高卒と大卒による賃金格差は諸外国と比較すると小さなものである。日本の学歴による格差は三極化しているのである。大学進学を決定する要因を考える為に、大学に進学した際の費用と収益を内部収益率法を用いて考えた結果、大学教育は有効な「投資機会」であることが明らかになった。現状の日本の大学進学に目を向けたところ、日本では不況にもかかわらず、大学進学率が1990年以降上昇し、2005年には進学率は50%以上になっている。これは、合格率の上昇に伴い進学希望者が増えた事と、不況によって人々の不安感が増大され大学進学希望者が増えた事の二つの要因が考えられる。大学は有効な投資機会として認められるものである。しかし、昔から続く日本の雇用形態と、大卒者が増えた事によって、大卒者の賃金は必ずしも高賃金では無くなった。大卒者間の格差を、私たち自身が意識する時代に突入しているのだ。
講評  今年度はアジアをテーマに選んだ卒業論文が3本あったことが目につきました。「東アジアの奇跡と今後の展望について」は、東アジアの国々が経済成長に成功した理由を明らかにしています。「東南アジアの日系企業」は、最近、東南アジアの日系企業で労使紛争が多発している原因を探っています。そして、「世界の貧困」も、バングラディシュのグラミン銀行のことを取り上げています。3人ともアジアの国々を旅行した経験があり、そのことがアジアを卒業論文のテーマにするきっかけになったのかもしれません。
 アルバイト先で感じたことが卒業論文のテーマになった学生も少なくありません。「大学全入時代における大学進学の利益」は、バイト先の飲食店の店長さんは高卒でまだ20歳代なのに、年収が千万円を超えているのを知り、大学へ進学することのメリットを改めて考えました。「若者の過労自殺」は、バイト先の居酒屋チェーン店の店長さんの過酷な働き方(働かされ方)を見て、過労自殺につながるような長時間労働がなぜ生じるのかを探りました。「主婦パート労働者」は、バイト先で一緒に働いている主婦パートを見て、それまで持っていた主婦パートのイメージが一変したことが卒業論文を書くきっかけでした。バイト先ではありませんが、「従業員の9割がアルバイトのディズニー」は、ディズニーが大好きな学生が選んだテーマです。このテーマを選んだのは彼女が初めてではありません。
 新聞やテレビで話題になったテーマ、授業で取り上げられたテーマを選んだ学生もいます。「日本人の働くモチベーション」は成果主義をキーワードに議論を展開していますし、「ヨーロッパの女性の働き方」は、ヨーロッパのなかでもとくに北欧の女性の働き方に注目しています。「最後のセーフティネット『生活保護』の未来」は、最近よく話題になった生活保護の議論をベーシックインカムにつなげていきます。「地域活性化の戦略」も最近、新聞やTVでよく話題になっているテーマです。新町キャンパスで開催された講演会を聞いて、それを卒業論文で引用したのは工夫です。
 卒業して働き始める自分たちが、近い将来考えるであろうことをテーマにした卒業論文もありました。「キャリア形成におけるパラダイムシフト」は、IT・ベンチャー企業に就職する学生が、転職も考えたキャリア形成について考えています。「働くという意味」も、なぜ働くのか、自分のためなのか、それとも家族のためなのか、そのあたりを卒業生にインタビューしています。
 今年度のゼミ優秀論文には「老舗味噌屋に学ぶ個人商店の生き残り術」を選びました。全編インタビューです。親戚の人にインタビューしたので、やはり本音で語ってくれた部分が多く、読んでいて、リアリティがある内容でした。優秀論文として掲載されるのであれば、ここは削ったほうがいいと思う部分もいくつかあるくらい、本音で語ってくれています。2、3時間のインタビューを卒業論文の字数である16,000字ちょっとに上手にまとめています。長すぎないもいいです。書きたいポイントを絞り込まないと短くできません。聞いてきたことをまとめただけではないかという見方もできますが、聞くことの難しさ、それをまとめることの難しさを私も少しは知っているので、この卒業論文をゼミ優秀論文に選びました。
キーワード1 学歴社会
キーワード2 学歴間賃金格差
キーワード3 内部収益率
キーワード4 大学進学率
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