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学科 産業関係学科
年度 2012
ゼミ名 上田 眞士
タイトル 生活保護の必要性-広がる貧困問題-
内容  近年、様々なマスメディアで取り上げられる「ワーキングプア」、「ネットカフェ難民」、「ニート」、「ひきこもり」・・・・。これらは、とくに現代深刻化している貧困の在り方である。
 決して人ごとではないという意識は確かに筆者自身にも存在はしている。しかし、同時に「自分には関係のない話」として問題を先送りにしようとする意識も存在している。湯浅(2009)も彼の運営するNPO法人自立生活サポートセンター・もやいに相談に来る依頼者の多くが「自分は貧困には関係ない」という意識をずっと持って問題を先延ばしにしている傾向があると分析している。この問題を先延ばしにする傾向がさらなる貧困の連鎖に繋がると湯浅(2009)は主張する。
 よって本論文では生活保護の必要性を探る中で、とりわけ、現在深刻化している貧困問題について考察を深めていく。そして貧困の現状を理解し、生活保護の必要性を今一度考えてみたい。以下、本論文の構成を述べる。第一章ではそもそも生活保護とはどういった制度なのか、そして、現在はどういった実体が存在しているのか考察する。そこから第二章では近年における貧困の実態と照らし合わせる。とくにここでは貧困の現状と現在の生活保護の制度との整合性を確かめることを重点におく。そして、第三章では第一章と第二章の分析を踏まえて生活保護の必要性とまたその批判を考察する。第四章では本論文から判断される結論と、今後予想される課題を提示する。
講評  提出された卒論テーマを分野別に列挙してみると,「産業空洞化と地域経済」「家電企業の日韓比較」「若者の就職難と非正規雇用」「少子化とワークライフバランス」「貧困問題と生活保護,福祉国家」「プロスポーツ選手のセカンドキャリア」等々となっています。これらのテーマを通覧しただけで,一方での経済や経営のグローバル化の進展,他方国内での格差社会化の展開という,現代日本の雇用社会の諸相が浮かび上がってきます。たしかに,問題の掘り下げや論理的な記述の如何という点では,個々の論文ごとにバラツキもありましたが,基本的には卒論作成という課題に対して,ゼミ生皆が誠実に取り組んでくれた,そのように考えています。ここではゼミ生が取り組んだ卒論作業を締めくくる講評として,どういう論文が優れた論文なのか,研究に際して大事だと思われるポイントを二点ほど指摘しておきたいと思います。
 一つには,政策提言の出来映えにではなく,問題把握や理解の深さ,広さにこそ,論文の命があるということです。そして,いま一つには,そのためにも本質的に批判的な研究であってほしい,そうした要望です。現代の雇用社会の住人である我々が,その雇用社会の一断面を取り上げ,現に存在するものを正面から受け止めようとするわけだから,そこでは必ず何らかの課題意識や問題意識が生まれてくるはずです。そうした現実に対して抱く緊張感を,論理的に整序して記述しようする姿勢が,論文の作成にとってはとりわけ大事だと思います。先人が述べてきたように,一方では,現にあるものをその存在の根拠から「肯定的」に理解すると同時に,他方では現実が抱え込んだ困難や矛盾を考察する「否定的」な把握も必要です。それが本質的に批判的な研究態度ということになるのだと思いますし,問題把握や理解の深さ,広さに繋がるのだと思います。超然とし過ぎだと言われるかもしれませんが,問題というものは,それがいったんしっかりと把握されたなら,社会が行動を通して,自ずと何らかの解決を見出していくことになる,そうしたものだと思います。
 とはいえ,「言うは易く行うは難し」,これも先人の残した金言です。卒論の評価基準というよりは,論文を執筆する際の「心がけ」だと考えて欲しい,そのように思います。
キーワード1 セーフティネット
キーワード2 補足性の原則
キーワード3 社会保障
キーワード4 新自由主義
キーワード5 水際作戦
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