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学科 社会学科
年度 2013
ゼミ名 藤本 昌代
タイトル 自殺論再考
内容 近年、自殺の増加、またその一因をなす過労自殺やうつ病等の精神疾患の急増が社会問題になっている。我が国では、1998年に年間自殺者数が3万人を超え、依然として高い水準で推移しており、緊急な対策が講じられるべき課題である。こうした中、社会学の古典で名高い『自殺論』は、現代の日本でも通用するのか。この疑問が本稿の起源である。デュルケムが行ったように、自殺率の変動と社会環境の関わりを調査し、自殺死亡の経年変動と社会的属性差(主に男女間に見られる差異)を「アノミー」の概念で分析していく。研究を進めていくと、『自殺論』で書かれていることは、19世紀の西欧では通用するが、現代の日本にはそぐわない点があり、説明しきれないことがあった。彼の生きた時代には考えられなかった「過重労働」や「精神疾患」から生じる自殺が現在の日本では多いように思える。また男女間の自殺率の違いは「労働」の違いに一因があることがわかった。共同参画社会への移行が進んでいるが、男女間での就業機会における不平等(特に正規雇用と非正規雇用)は依然としてある。はたしてこの不平等は悪いことばかりなのだろうか。自殺に対する免疫が高いという1点のみでは、間違いなく恩恵を受けていると言える。
講評 本論文はデュルケムの『自殺論』に着目したものである。デュルケムの議論に沿って先行研究を検討し、現代日本社会においてデュルケムの言うアノミー型自殺の議論は成立するのかということについて日本の離婚率、自殺率の関係を分析している。分析では自殺率が男性と女性がほぼ同数であった時期もありながら、高度経済成長期以降、現在まで男性はほぼ2倍になっているのに対して女性は横ばいであることから、現代社会の男性の自殺は長時間労働による疲弊、過重労働による過労死、ウツなどによるものが大きく、離婚によるものは少ないのではないかとしている。女性は従業上の地位によって差別されてきたが、過労死するほどの長時間労働を強いられる立場ではなかったことから、男性の働き方に背後で守られてきたという結論に至っている。
キーワード1 自殺
キーワード2 アノミー
キーワード3 ジェンダー
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