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学科 メディア学科
年度 2013
ゼミ名 渡辺 武達
タイトル 廃墟が語る「真実」~メディアが作り上げた廃墟ブームから考える廃墟の本当の魅力~
内容 近年日本のマスメディアでもよく取り上げるようになってきた「廃墟ブーム」の由来を研究し、その結果から、改めて「廃墟」の本当の魅力とは何について考察した。まず第1章では、18世紀ヨーロッパで生まれ、次第に拡大してきた廃墟趣味に焦点をあたって、なぜ人々は廃墟に目を向けるようになったのか、廃墟という場所はかれらにとって一体どのような空間だったのかについて議論した結果、歴史の転換期に、意識の移行あるいはカオス状態に陥る時に、現実逃避という空間として、廃墟は繰り返し蘇るということが分かった。とくに廃墟を内面化した近代ロマン主義者たちはいち早く廃墟こそ自分の姿であり(自分が誰やらもわからず、コミュニケーションも拒否され、作り主にも疎まれて無限にさまよう絶対の孤独者の姿である)、近代人そのものの姿として捉えていた。19世紀産業革命以来、メディア技術の発明革新により、ロマン主義の内面化された「廃墟」から人間「廃墟」の大量生産へと変わり、やがて「廃墟ブーム」の渦を巻き始めた。次の第2、3章では、主に現代日本のメディアが作り上げた「廃墟ブーム」を中心に、日本の「廃墟ブーム」の形成と「廃墟ファン」の構成について紹介し、現代日本の「廃墟ブーム」の特徴は、つまり「廃墟を内面化(『廃墟』=『死』)できず、その『風景』あるいは廃墟にまつわる物語にとらわれ、断片的に『廃墟』の風景を眺めているだけである」。廃墟のその本当の姿を例えるとすれば、ある意味では「鏡」であると言える。「廃墟」という「鏡」を通して、自分自身を見つめ直すものであると考えている。
講評 筆者はかつて長崎軍艦島を訪れ、「ここの時間が四十年前に止まったまま...」であることを見て、「隔離された次元、捨てられた過去...人間ってひどいもんだ」と大きな衝撃を受けた。ところがこうした廃墟訪問が今、ブームとなり、多くの人びとが訪れるようになっている。それは「遺跡」や「古戦場」を訪ねる気持ちに近いものだろうが、自分たちの過去、歴史を訪ねることにも通じていることから、今の廃墟にかつてそこで繰り広げられた「衣食住」「仕事」「生活」「喜怒哀楽」といった「人間の活動」を時空を超えて感じることの必要性を説く。廃墟となった軍艦島を素材として、現在の観光振興策についてコミュニケーション論から考察したメディア学科卒論としてのレベルをクリアした論文である。
キーワード1 廃墟ブーム
キーワード2 ピクチャレスク
キーワード3 ロマン主義
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