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学科 産業関係学科
年度 2013
ゼミ名 上田 眞士
タイトル 若年雇用と新卒一括採用
内容 日本では長い間若年者の就業問題が大きな話題になることはなかった。しかし1990年代以降若年者の雇用環境は悪化し、正社員になりたくてもなれない若者が急増している。この現象を生み出しているのは何なのか。新卒一括採用に焦点を当て、新卒一括採用がなぜ日本に定着したのか産業関係学の知識を活かし分析する。またゲーム化した就職活動などの新卒一括採用が生み出す弊害を挙げ、この状況を打破する方法を提案したい。第一章で若年雇用の実態についてグラフなどを用いて明らかにし、新卒一括採用という仕組みがいつ生まれたのかを述べる。第二章は日本的雇用慣行との関わりを述べながら日本企業に新卒一括採用が定着する理由を明らかにする。第三章では新卒一括採用が生む弊害の中でも、年長フリーターと就職活動に焦点を当て述べる。第四章ではこれからの若年雇用を改善すべく私の考えを述べる。就職時期や採用時期の分散化や学校教育の改善を提案する。

講評  提出された卒論テーマを分野別に列挙してみると,「日本の家電産業復活の鍵」「日系企業の海外進出と現地化」「ブラック企業・名ばかり管理職・新卒採用問題」「女性雇用と育休問題」「マネジメント・リーダーシップ」等々となっています。これらのテーマに表出しているものは,一方での経済や経営のグローバル化の進展,また他方では国内での種々の労働問題の発生という,現代日本の雇用社会が展開しているダイナミズム,そこでの当事者たちの苦闘に他なりません。たしかに個々の論文ごとに,問題の掘り下げや論理的な記述という点では精粗もありました。しかし基本的には,卒論作成という課題に対して,困難な就職活動の中でもゼミ生皆が誠実に取り組んでくれた,そのように考えています。そこで,ここでは一年を通した卒論作業を締めくくる講評として,研究や考察に際して私が大事だと思うポイントを,簡単に指摘しておきたいと思います。
 大切なことは,論文の良し悪しの重点は政策提言の出来映えにではなく,問題把握や理解の深さ,広さにこそあるのだということです。そして,そのためにも本質的に批判的な研究や考察態度を持って欲しい,そうした要望です。それは決して簡単なことではありませんが,これまで先人が強調してきたように,一方では現にあるものをその存在の根拠から「肯定的」に理解すると同時に,他方ではその抱え込まざるをえなかった困難や矛盾から現実を「否定的」に理解する,そうした現実への接近態度のことなのだと思います。少しかみ砕き過ぎかもしれませんが,ただ単に日本的雇用の非を鳴らすだけではつまらない,なぜ現実はそうたらざるをえないのか,そこにまで問題把握を広め深めて欲しい,あるいは,ただ単に日本的経営を称賛するだけではつまらない,それが自らの体内に抱え込んだ病理にまで洞察の目を向けて欲しい,そういうことになるでしょう。要するに,現実は必ず緊張や葛藤を孕んでいます。その緊張や葛藤にこそ,考察の焦点があるのだということです。将来への展望(≠「政策提言」)も,実はそうした緊張や葛藤に目を凝らしてこそ,はじめて見えて来るはずのものだと思います。
 とはいえ,「言うは易く行うは難し」,これも先人の残した金言です。卒論の評価基準というよりは,論文を執筆する際の心がけだと考えて欲しい,そのように思います。    <以上> 
キーワード1 日本的雇用慣行
キーワード2 正社員
キーワード3 非正規雇用
キーワード4 若年雇用
キーワード5  
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