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学科 産業関係学科
年度 2013
ゼミ名 上田 眞士
タイトル 日本家電メーカー復活の鍵を探る
内容 未曾有の大赤字を計上した日本の主要電機メーカー3社(パナソニック、ソニー、シャープ)の業績不振の原因を検証し、復活への糸口を探る。ライバルである韓国サムスン電子やその他のアジア企業が地域密着型のグローバル視点を取り入れた製品開発を行い、急成長を遂げる一方で、日本は高水準の技術搭載に固執する余り、マーケティングに失敗し、世界トップシェアの座を奪われる事となった。かつては看板であったテレビ事業は、いまや日本の失敗の原因の一つである。また、ボトムアップ経営の日本企業は意思決定のスピードが早く、技術の陳腐かが早い家電市場においては不利である。財政危機を立て直すには、日本の技術力を最大限に活かせるインフラ部門等の価格競争からは縁の遠い事業にシフトし、収益の安定化を計るべきである。そこで確保した収益を新たな研究開発に投資し、新しい需要を作り出し、市場を牽引する事が日本家電復活の手段であると主張し、本論文を締めくくる。
講評  提出された卒論テーマを分野別に列挙してみると,「日本の家電産業復活の鍵」「日系企業の海外進出と現地化」「ブラック企業・名ばかり管理職・新卒採用問題」「女性雇用と育休問題」「マネジメント・リーダーシップ」等々となっています。これらのテーマに表出しているものは,一方での経済や経営のグローバル化の進展,また他方では国内での種々の労働問題の発生という,現代日本の雇用社会が展開しているダイナミズム,そこでの当事者たちの苦闘に他なりません。たしかに個々の論文ごとに,問題の掘り下げや論理的な記述という点では精粗もありました。しかし基本的には,卒論作成という課題に対して,困難な就職活動の中でもゼミ生皆が誠実に取り組んでくれた,そのように考えています。そこで,ここでは一年を通した卒論作業を締めくくる講評として,研究や考察に際して私が大事だと思うポイントを,簡単に指摘しておきたいと思います。
 大切なことは,論文の良し悪しの重点は政策提言の出来映えにではなく,問題把握や理解の深さ,広さにこそあるのだということです。そして,そのためにも本質的に批判的な研究や考察態度を持って欲しい,そうした要望です。それは決して簡単なことではありませんが,これまで先人が強調してきたように,一方では現にあるものをその存在の根拠から「肯定的」に理解すると同時に,他方ではその抱え込まざるをえなかった困難や矛盾から現実を「否定的」に理解する,そうした現実への接近態度のことなのだと思います。少しかみ砕き過ぎかもしれませんが,ただ単に日本的雇用の非を鳴らすだけではつまらない,なぜ現実はそうたらざるをえないのか,そこにまで問題把握を広め深めて欲しい,あるいは,ただ単に日本的経営を称賛するだけではつまらない,それが自らの体内に抱え込んだ病理にまで洞察の目を向けて欲しい,そういうことになるでしょう。要するに,現実は必ず緊張や葛藤を孕んでいます。その緊張や葛藤にこそ,考察の焦点があるのだということです。将来への展望(≠「政策提言」)も,実はそうした緊張や葛藤に目を凝らしてこそ,はじめて見えて来るはずのものだと思います。
 とはいえ,「言うは易く行うは難し」,これも先人の残した金言です。卒論の評価基準というよりは,論文を執筆する際の心がけだと考えて欲しい,そのように思います。    <以上> 
キーワード1 グローバル化
キーワード2 マーケティング
キーワード3 意思決定
キーワード4 B to B
キーワード5  
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