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学科 産業関係学科
年度 2013
ゼミ名 上田 眞士
タイトル 日本における労働問題
内容 本稿は日本の労働時間に関する考察である。第一章では、厚生労働省が2012年に実施した「平成24年度就労条件総合調査結果(労働時間制度)」をもとに、所定労働時間・年間休日総数・年次有給休暇・特別休暇制度・変形労働時間制・みなし労働時間制など、制度と労働実情について見ていこうと考える。第二章では、外資系大手製薬メーカーM社の女性MR職の方に実際の労働環境についてインタビューをさせて頂いた話を紹介している。そのインタビュー内容を、一日のスケジュール・MRの拘束時間の長さ・MR職の特徴=みなし労働時間の三つの切り口から紹介し、述べていこうと考える。第三章では、長時間労働と過労死の関連性と健康被害への対策について、厚生労働省平成24年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」を参照し、みていく。第四章では、第一章から第三章で見てきた実情に対して、これまで政府は日本人の労働に対してどのような対策をとってきたのかを紹介し、それに対する考察を行いたいと考える。
講評  提出された卒論テーマを分野別に列挙してみると,「日本の家電産業復活の鍵」「日系企業の海外進出と現地化」「ブラック企業・名ばかり管理職・新卒採用問題」「女性雇用と育休問題」「マネジメント・リーダーシップ」等々となっています。これらのテーマに表出しているものは,一方での経済や経営のグローバル化の進展,また他方では国内での種々の労働問題の発生という,現代日本の雇用社会が展開しているダイナミズム,そこでの当事者たちの苦闘に他なりません。たしかに個々の論文ごとに,問題の掘り下げや論理的な記述という点では精粗もありました。しかし基本的には,卒論作成という課題に対して,困難な就職活動の中でもゼミ生皆が誠実に取り組んでくれた,そのように考えています。そこで,ここでは一年を通した卒論作業を締めくくる講評として,研究や考察に際して私が大事だと思うポイントを,簡単に指摘しておきたいと思います。
 大切なことは,論文の良し悪しの重点は政策提言の出来映えにではなく,問題把握や理解の深さ,広さにこそあるのだということです。そして,そのためにも本質的に批判的な研究や考察態度を持って欲しい,そうした要望です。それは決して簡単なことではありませんが,これまで先人が強調してきたように,一方では現にあるものをその存在の根拠から「肯定的」に理解すると同時に,他方ではその抱え込まざるをえなかった困難や矛盾から現実を「否定的」に理解する,そうした現実への接近態度のことなのだと思います。少しかみ砕き過ぎかもしれませんが,ただ単に日本的雇用の非を鳴らすだけではつまらない,なぜ現実はそうたらざるをえないのか,そこにまで問題把握を広め深めて欲しい,あるいは,ただ単に日本的経営を称賛するだけではつまらない,それが自らの体内に抱え込んだ病理にまで洞察の目を向けて欲しい,そういうことになるでしょう。要するに,現実は必ず緊張や葛藤を孕んでいます。その緊張や葛藤にこそ,考察の焦点があるのだということです。将来への展望(≠「政策提言」)も,実はそうした緊張や葛藤に目を凝らしてこそ,はじめて見えて来るはずのものだと思います。
 とはいえ,「言うは易く行うは難し」,これも先人の残した金言です。卒論の評価基準というよりは,論文を執筆する際の心がけだと考えて欲しい,そのように思います。    <以上> 
キーワード1 年間総実労働時間
キーワード2 みなし労働時間制
キーワード3 労災
キーワード4 過労死
キーワード5 労働時間短縮政策
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