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学科 産業関係学科
年度 2014
ゼミ名 寺井 基博
タイトル 「日本型成果主義の落ち着き」
内容  ある会社が成果主義の導入をスタートさせた。このような報道を、最近よく耳にするような気がする。実際、私が就職活動を通して感じたことは、成果主義は現在、大企業ほど導入しているところが多く、中小、とりわけ小規模な企業はほとんど取り入れられていないのが現状であるということだ。導入している企業とそうでない企業があるということは、つまり、従来の雇用制度の変化の道の中間点にある、という見解を持ち、本論文では、成果主義が日本でどのように落ち着いて、制度として運用されているのか、という点に注視して記述している。
 日本の人事・賃金モデルは人間基準、つまり労働対価ではなく労働力対価により貫かれて来たといえる。戦後からスタートした終身雇用・年功賃金といったように、「人」に基準を置き、処遇を決定してきたということである。これは日本モデルと呼ばれる、日本を特徴付ける雇用制度であるが、経済の変化に相まって、その制度の内容が微妙に変化してきた過去がある。そして成果主義への転換についても、それまでたどった変化と同様、雇用制度の大幅な変更はなされず、飽くまで「人基準」という色は残して、制度(とりわけ評価と処遇)の内容を微妙に変化させた。ここでいう、「人基準」、つまり能力主義を基軸に、成果主義の考え方を組み入れた、という意味から日本型成果主義と呼ばれるようになった。変化の内容として、①人と仕事のより適切な結びつけ ②従業員各自の具体的な成果目標の設定 ③管理職層の賃金の変化、職能給と役割級の組み合わせ が挙げられる。以上三つから、成果主義の導入は、成果と評価を固く結びつけるために、処遇の内容をより詳しく、緻密なものに変化させた、ということがわかった。
講評  提出された論文のタイトルは、「働くということ」「日本の人事制度変遷」「労働法における男女平等の現状と課題」、
「プロ野球選手の労働者性」「障害者に対する施策の矛盾」、「ホワイトカラー・エグゼンプション導入に関する考察」「カンボジアPKOと現在」等々多彩であった。卒業論文は自分自身と向き合う作業にほかならないので、関心のあるテーマならば全力で取り組むことができるだろうと考えてテーマは自由とした。
 卒業論文の作成にあたって、①オリジナルな分析や見解あるいは政策提言を書く必要はなく、②先行文献を丹念に読み込んで、③それらの見解を論文の形式に沿って整理するように指導した。①でオリジナルな見解や分析を求めないのは、それを気にするあまりに何も書けなくなるからである。卒業論文では、既知の分析結果や見解を自らの判断によって再整理して体系づけることに意味がある。その整理の在り様が各自の考えとなる。
 大切なことは、すでに知っている事実や分かっている見解であっても、その事実や見解は過去に本やウェブ等を通じて得られた知見であり、自分自身のオリジナルな発見や指摘ではないことを自覚することである。それがいつどこで誰によって最初に発見・指摘されたかを明らかにするために出典を明らかにしなければならない。この点に気を付けて文献を整理すれば、基本的に「論文」の形式になる。
ここまで説明すると、複数の学生からつぎの質問が寄せられる。先行研究の中ですでに書かれてしまっているので、この上「自分の考え」として何を書けばよいのか、いや何も書けない、という内容だ。答えは明瞭である。先行研究の記述をどのように理解し評価したかを書けばよい。これらの作業そこが分析であり、読み手の考えに他ならない。文献研究が単なるコピー&ペーストとならない所以である。
 今回提出された各論文は、概ね上記の点について一定基準を上回っている。考察が不十分なところや論理展開がやや強引なところなど、荒削りな面はある。しかし、地道な努力が実を結んだ論文や先行文献の整理を踏まえて筆者の思いが切々と綴られた論文が複数見られた。それらは自分自身との対話の深さによるものであり、それが自ずと読む者を惹きつける。
キーワード1 日本型成果主義
キーワード2 職能資格制度
キーワード3 目標管理制度
キーワード4 役割給
キーワード5 職責給
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