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学科 産業関係学科
年度 2014
ゼミ名 上田 眞士
タイトル 女性活躍の行き詰まり -男なみの就職をした女性たちの退職要因-
内容 大卒女性が、総合職としてバリバリ働ける“やりがい”のある仕事と、結婚・出産をして幸せな家庭築くことの両方を手に入れることはできるのだろうか。現在大学4年生で、来年には卒業し総合職として『男並み』の就職をする私自身が将来の家庭を持った後のキャリアがみえにくいことに不安になる。
世間では、政府の女性活用に向けた取り組みや企業のママ支援等の制度の充実がアピールされていることによって女性の社会進出が進んだかのように思える。
しかし、そもそも女性の社会進出は政府や企業による制度の充実、女性の就業率の増加だけで判断できるのだろうか。女性の労働参加については、高齢化、未婚化、非正規労働の増加等、構造的要因によってもたらされた面もあり、必ずしも制度的な支援によって引き上げられたものではないと考えた。そこで、本稿では、先行研究のレビューから、日本社会における女性活用の行き詰まりについて、なぜ大卒女性が結婚後家庭を持つとやめるのかを公的要因である社内環境と、指摘要因である、配偶者・女性自身の意識調査に分けて調査し、就職時に男並みの就職をしてバリバリ働く意欲をもった女性ほど、結婚・出産を機に「女ゆえ」に退職していると結論づけた。また、その選択に至った背景には、当人はもちろん配偶者、職場環境での「女は家庭、男は仕事」というジェンダー秩序の根強さがあると指摘した。
講評 提出された卒論テーマを分野別に列挙してみると,「若年就労問題」「インターンシップ」「女性活用・女性活躍推進」「過労死・ブラック企業」「ワークライフバランス」「企業の生き残り戦略」「労働規制緩和」等々となっています。これらのテーマに表出しているものは,一方での経済や経営のグローバル化の進展,また他方では国内での種々の労働問題の発生という,現代日本の雇用社会が展開しているダイナミズム,そこでの当事者たちの苦闘に他なりません。たしかに個々の論文ごとに,問題の掘り下げや論理的な記述という点では精粗もありました。しかし基本的には,卒論作成という課題に対して,困難な就職活動の中でもゼミ生皆が誠実に取り組んでくれた,そのように考えています。そこで,ここでは一年を通した卒論作業を締めくくる講評として,研究や考察に際して私が大事だと思うポイントを,簡単に指摘しておきたいと思います。

大切なことは,一つには,論文の良し悪しの重点は,問題把握や理解の深さ,広さにこそあるのだということです。そして,そのためにも本質的に批判的な研究や考察態度を持って欲しい,そうした要望です。それは決して簡単なことではありませんが,少しかみ砕いて言えば,ただ単に日本的雇用の非を鳴らすだけではつまらない,なぜ現実はそうたらざるをえないのか,そこにまで問題把握を広め深めて欲しい,あるいは,ただ単に日本的経営を称賛するだけではつまらない,それが自らの体内に抱え込んだ病理にまで洞察の目を向けて欲しい,そういうことになるでしょう。要するに,現実は必ず緊張や葛藤を孕んでいます。その緊張や葛藤にこそ,考察の焦点があるのだということです。

いま一つは,まとめや考察にあたっては,無理矢理な政策提言などを行わないこと,むしろ疑問点を掘り下げて提示することの方が,ずっと大事だということです。政策提言の価値自体を否定するつもりは毛頭ありません。問題は,安易に政策提言してしまう習い性には,「わかったつもりになる」という悪弊が結びつくということでしょう。漠然として曖昧模糊で,何を質問して良いのか判らないという状況から,具体的に解かれるべき問題が見えて来る。おそらくそれが「理解が進む」ということでしょう。そうした態度を皆さんには大事にして欲しいと思います。

とはいえ,「言うは易く行うは難し」。卒論の評価基準というよりは,論文を執筆する際の心がけだ,そのように考えて下さい。

<以上>
キーワード1 仕事に求めるやりがい
キーワード2 男並みの就職
キーワード3 ジェンダー秩序
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