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学科 産業関係学科
年度 2014
ゼミ名 上田 眞士
タイトル 京都企業から見る、日本的経営
内容 日本的経営は高度経済成長後、バブル崩壊後の不景気に、何度か転換期があった。世界は少品種大量生産から多品種少量生産に移り変わり、集団より個の力がより重要になっていった。90年以降から最近に至るまでの間、能力主義や職能給、実力昇格、成果主義が導入され、よりアメリカのスタイルが強くなっていった。従来までの集団主義経営で家族的な経営は失われ、株主主権で経営者は無理なリストラと正規雇用を削減し、失業者と非正規社員が増加した。ここから少なくとも、日本に持ち込んだ海外の経営論によって人に優しい経営から遠ざかっていると言える。経済もバブルがはじけて、15年以上年月が過ぎたが、なかなか回復していない。現在の従業員に優しくない会社に問題があるとすれば反対の、人に優しい会社という本来あった日本的経営を見つめ直す必要は大いにある。そこで「従業員に優しい」経営を貫き独自に進化する京都企業に注目した。京セラ、任天堂、日本電産、村田製作所、島津製作所、オムロン、ワコールなど多数の有名企業を有する京都企業は不景気でも強く、デフレ不況でも高収益を生み出している企業がある。伝統とハイテクが融合する環境で独自の進化を遂げる京都式経営はどういったものか検証していきたい。
講評 提出された卒論テーマを分野別に列挙してみると,「若年就労問題」「インターンシップ」「女性活用・女性活躍推進」「過労死・ブラック企業」「ワークライフバランス」「企業の生き残り戦略」「労働規制緩和」等々となっています。これらのテーマに表出しているものは,一方での経済や経営のグローバル化の進展,また他方では国内での種々の労働問題の発生という,現代日本の雇用社会が展開しているダイナミズム,そこでの当事者たちの苦闘に他なりません。たしかに個々の論文ごとに,問題の掘り下げや論理的な記述という点では精粗もありました。しかし基本的には,卒論作成という課題に対して,困難な就職活動の中でもゼミ生皆が誠実に取り組んでくれた,そのように考えています。そこで,ここでは一年を通した卒論作業を締めくくる講評として,研究や考察に際して私が大事だと思うポイントを,簡単に指摘しておきたいと思います。

大切なことは,一つには,論文の良し悪しの重点は,問題把握や理解の深さ,広さにこそあるのだということです。そして,そのためにも本質的に批判的な研究や考察態度を持って欲しい,そうした要望です。それは決して簡単なことではありませんが,少しかみ砕いて言えば,ただ単に日本的雇用の非を鳴らすだけではつまらない,なぜ現実はそうたらざるをえないのか,そこにまで問題把握を広め深めて欲しい,あるいは,ただ単に日本的経営を称賛するだけではつまらない,それが自らの体内に抱え込んだ病理にまで洞察の目を向けて欲しい,そういうことになるでしょう。要するに,現実は必ず緊張や葛藤を孕んでいます。その緊張や葛藤にこそ,考察の焦点があるのだということです。

いま一つは,まとめや考察にあたっては,無理矢理な政策提言などを行わないこと,むしろ疑問点を掘り下げて提示することの方が,ずっと大事だということです。政策提言の価値自体を否定するつもりは毛頭ありません。問題は,安易に政策提言してしまう習い性には,「わかったつもりになる」という悪弊が結びつくということでしょう。漠然として曖昧模糊で,何を質問して良いのか判らないという状況から,具体的に解かれるべき問題が見えて来る。おそらくそれが「理解が進む」ということでしょう。そうした態度を皆さんには大事にして欲しいと思います。

とはいえ,「言うは易く行うは難し」。卒論の評価基準というよりは,論文を執筆する際の心がけだ,そのように考えて下さい。

<以上>
キーワード1 京都式経営
キーワード2 人に優しい経営
キーワード3 伝統産業
キーワード4 ハイテク産業
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