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学科 社会学科
年度 2014
ゼミ名 藤本 昌代
タイトル 母子家庭の現状と孤立要因 ――松山市を事例として――
内容  本稿では松山市における母子家庭の現状に焦点を当て、その現状と彼女らがなぜ社会的不利な立場に追い込まれるのか、その孤立要因を明らかにするため、インタビュー調査を行った。4章では、母子家庭になる以前に問題になること、母子家庭になった後に問題になることについて、さらには母子家庭が社会的に孤立してしまう6つの要因について説明した。この6つの孤立要因は、彼女たちにいくつも重なって作用するのだ。
 6つの孤立要因とは、1つ目は、母子家庭内学歴格差、2つ目は、階層的連鎖、この2つについてはすでに先行研究でも指摘されている。3つ目は、若年結婚による未熟さ、4つ目は、母親の再学習の機会の遺失、5つ目は、社会関係資本の不足、6つ目は、「出戻り」という規範意識である。
 筆者がこの6つの孤立要因の中で重要と考える要因は、若年結婚による未熟さと母親の再学習の機会の遺失である。若年期での妊娠出産による、就学機会の遺失が事態を深刻化させているといえる。このような若年結婚による負の連鎖を阻止するためには、若年層における性教育を見直していくべきだと考える。
講評 この論文はどのような社会的環境の中で母子家庭が発生しており(パートナーとの離別)、母子家庭になった後にどのような困難に直面しているのか、貧困から抜け出せない悪循環の要因が何であるのか、母子家庭間においてどのような格差があるのかという問いを明らかにするものである。検証は、官庁データおよび調査地の行政の担当者へのインタビュー調査という方法で進められている。調査地は松山市で全国的に生産性が低く、女性が働きやすい産業が少ない地域である。母子家庭にはいくつかの特徴があるが、死別ではなく離別の母子家庭の場合、10代で母親になった女性は、高校を中退せざるを得ないことも多く、夫と離別後、自身が主たる家計維持者にならねばならない場合、高校卒業程度という求人に応募しても採用されないことが多く、パートによる単純労働で家計を支えなければならず、また、親族からも「出戻り」として支援されない場合もあり、困窮した状況の中で生活をしていることが明らかになった。また、母子家庭の間では、高学歴女性の場合、親も高学歴であることが多く、親族による経済的支援を受けやすいが、低学歴女性の場合、親族も経済的余裕がない場合が多い。母子家庭間にも階層間格差が表れていることも明らかにした。繊細な事象であるため、母子家庭の母親への聞き取りは困難であったが、行政の担当者から実際の状況を意欲的に聞き取った研究である。
キーワード1 若年結婚による未熟さ
キーワード2 母親の再学習の機会の遺失
キーワード3 「出戻り」という規範意識
キーワード4  
キーワード5  
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