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学科 社会学科
年度 2014
ゼミ名 藤本 昌代
タイトル 「「人並み」属性を探る―内包される二極性―」
内容 本稿は自身の生活に対して「人並みの生活がしたい」と考える人びとの属性を捉えるものである。「人並み」意識をもつ人は、周りの人と同じという意味が内包されている点で、中意識を持つ人と同類と予想できる。自分は中だと考える人は、生活に特に不満のない潜在的生活満足者であると推測できることから、生活満足度の高い属性と一致する部分があると仮定した。本稿では内閣府実施の『多様な働き方に対する意識調査』(2006)の生活基準に関する質問に着目し、問いに対して「人並みの生活がしたい」と答えたと男性の詳しい属性を調べた。その結果、転職後の所得が増加した専門職と、転職後の所得が減少した現業職が「人並み」と答えていた。中意識の先行研究では、本来の中レベルの人だけではなく、所得または学歴・職業威信の片方が高く、片方が低いという「地位の非一貫性」をもつ者も中を選んだために中が非常に多くなった。しかし今回の「人並み」は所得・学歴・職業威信が全て高い、もしくは全て低いという地位の非一貫性のない、社会的地位が正反対な両者においてみられた。
講評 この論文は人々が漠然と考える「人並み」という意識の構造の解明を試みるものである。社会階層論では「中意識」内の地位の非一貫性が議論され、また生活満足度を規定する要因研究では属性の影響による満足、不満足を示したものが多い。本稿ではこれらの先行研究を踏まえ、高生活満足度者を「顕在的生活満足者」とすると、「人並み」指向者は「潜在的生活満足者」であるかもしれないという仮説のもと、中意識者、高生活満足者と「人並み」指向者が同様の属性であるのか、内閣府のデータの二次分析を行っている。本稿の分析では、まず全体の生活意識傾向を分析し、その中で親、友人、自分自身を比較対象としつつ、生活向上を指向する人々が多いことを確認し、「人並み」という具体的な比較対象を持たない、いわば「一般化された他者」と自身を比較する人々に注目している。次の分析では、「人並み」指向者に限定し、属性、および仕事に関する状況を検討し、「人並み」の生活を指向する人々は2種類あり、高学歴高所得者層の「ポジティブな潜在的生活満足者」と低学歴低所得者層の「ネガティブな生活不満足者」(生活の改善希望者)が包含されていることが発見された。ポジティブな「人並み」指向者は転職による所得増額が見られたが、ネガティブな「人並み」指向者は転職による所得減額が見られ、2つの「人並み」の指す意味、概念の違い、その背後にある社会階層の影響を明らかになった。本稿はあいまいなまま用いられがちな「人並み」概念の構造を明らかにした論文として評価できる。
キーワード1 人並み
キーワード2 生活満足度
キーワード3 属性比較
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