詳細
学科 産業関係学科
年度 2015
ゼミ名 石田 光男
タイトル 「お金がないから大学に行けない」は本当か
内容  「お金がないから大学に行けない」と耳にすることがある。確かに一般的に、私立大学では年間約100万円、国立大学では年間約50万円もの学費が発生する。それだけでなく、受験をするにあたりかかる費用、下宿費用など実に多くのお金が必要となる。ただ、この国には学生支援機構の奨学金をはじめ、多くの奨学金制度が存在する。それだけでなく、民間企業もそうした教育費に充当できるローンをそろえている。こういったものを利用すれば、たとえお金がなくとも大学に進学すること自体は可能である。では、「お金がないから大学に行けない」は全くの嘘であろうか。いや、そうでもないのである。
 過程が経済的な障害を抱えているという状況は、長い時間をかけて子供の考え方・行動に大きな影響を与えている。それが顕著に表れるのは学業成績である。過程に経済的な障害を抱える子供は過程で学習する時間が、普通の家庭の子供より大幅に短いのである。さらに、それらそもそもの原因として、「努力しようとしない」という傾向がみられるのである。そういった姿勢が学業成績、ひいてはその後の進路選択に大きな影響を与えているのである。そうやって考えると「お金がないから大学に行けない」はあながち間違ってはいないといえるのである。
講評 全体の講評:卒論は大学での勉強の総決算であるから、日ごろの勉学の質が問われる。全体に3・4年でのゼミでの勉強が、すべて私の責任であるが、不徹底で、何とか形式を整えたものがいくつか散見される。とはいえ、下記の卒論は評価すべき努力の産物である。
 「アンドルー・ゴードンから見る日本労使関係」は、難しい方法的問題に直面しつつ、よく粘った論文である。難しさは、アンドルー・ゴードンの『日本労使関係史』のような、史実に基づいた手堅い歴史的実証研究を跡付けながら、なおかつ実証的裏づけを持ちえない自身の意見や批判をどのように表現すべきかという問題である。ただ単にその本の要約では物足りない、かといって実証的に反論する材料を事欠き、かつ反論の論拠は石田仕事論に依拠せざるを得ない弱点の自覚の中で、何とか今の力量の範囲でまじめに取り組んだことを高く評価したい。
 「人生哲学を踏み台にして」は、難解な福田恒存の『芸術とはなにか』と『人間・この劇的なるもの』をよく読み、どのように理解したかを丁寧に述べた論文である。一見、産業関係とは無縁なテーマであるが、社会科学の失いつつある人間学としての本質を回復する必要という文脈におきなおして考えれば、適切なテーマである。この真摯な勉強により、産業関係学も哲学であるとまで言い切れる理解につながっている力作である。
 「日本の音楽産業」は、そのビジネスとして変容を克明に描いた石田仕事論の系譜に属する好論文である。執筆者の音楽への情熱が書かせた作品である。
キーワード1 貧困家庭
キーワード2 教育費
キーワード3 意識の格差
キーワード4  
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