詳細
学科 産業関係学科
年度 2015
ゼミ名 石田 光男
タイトル アンドルー・ゴードンから見る日本労使関係史 ~雇用関係の規則の観点から検討して~
内容  本論はアンドルー・ゴードン『日本労使関係史1853-2010』(岩波書店)の批評である。はじめに小林秀雄から批評をいかにして行うのかについて記述する。第1章では雇用関係の「規則」について論じる。第2章では日本の戦時下における労使関係をゴードン氏目線から論じる。その影響が続く第3章で戦後いかなる決着がなされたのか。また環境の変化の中で持続するものは何かについて論じる。そして第4章では協調的労使関係がなされる高度経済成長期から現在までを論じる。第2章から第4章まではあくまでもゴードン氏の視点に立った日本労使関係史の記述である。第5章では「アンドルー・ゴードンと私」と題し、「私が日本労使関係史を書くのであれば」という視点に立ち、アンドルー・ゴードン氏との抗い難いズレを論じる。アンドルー・ゴードンをダシにして自己を語るのである。端的に述べると「仕事論」の欠如が私とのズレである。そして本論を終えるにあたって、学生としての私という存在について語ることとなる。
講評 全体の講評:卒論は大学での勉強の総決算であるから、日ごろの勉学の質が問われる。全体に3・4年でのゼミでの勉強が、すべて私の責任であるが、不徹底で、何とか形式を整えたものがいくつか散見される。とはいえ、下記の卒論は評価すべき努力の産物である。
 「アンドルー・ゴードンから見る日本労使関係」は、難しい方法的問題に直面しつつ、よく粘った論文である。難しさは、アンドルー・ゴードンの『日本労使関係史』のような、史実に基づいた手堅い歴史的実証研究を跡付けながら、なおかつ実証的裏づけを持ちえない自身の意見や批判をどのように表現すべきかという問題である。ただ単にその本の要約では物足りない、かといって実証的に反論する材料を事欠き、かつ反論の論拠は石田仕事論に依拠せざるを得ない弱点の自覚の中で、何とか今の力量の範囲でまじめに取り組んだことを高く評価したい。
 「人生哲学を踏み台にして」は、難解な福田恒存の『芸術とはなにか』と『人間・この劇的なるもの』をよく読み、どのように理解したかを丁寧に述べた論文である。一見、産業関係とは無縁なテーマであるが、社会科学の失いつつある人間学としての本質を回復する必要という文脈におきなおして考えれば、適切なテーマである。この真摯な勉強により、産業関係学も哲学であるとまで言い切れる理解につながっている力作である。
 「日本の音楽産業」は、そのビジネスとして変容を克明に描いた石田仕事論の系譜に属する好論文である。執筆者の音楽への情熱が書かせた作品である。
キーワード1 賃金論
キーワード2 仕事論
キーワード3 日本型雇用システム
キーワード4 アンドルー・ゴードン
キーワード5 批評
戻 る
Copyright (C) Doshisha University All Rights Reserved.