詳細
学科 産業関係学科
年度 2016
ゼミ名 阿形 健司
タイトル 男性育児休業の現状と課題
内容 男性による育児休業の取得率は女性に比べかなり低い。その原因は、長く働くほど評価される日本社会において、育児休業を取得することで上司からネガティブな印象を受けたくないからである。しかし男性による育児休業は、金銭的・時間的理由から結婚・出産を避けている女性、育児により退社した女性が仕事と家庭の両立を実現するための条件づくりとして有効であり、育児休業を取得することで労働力人口を増加させることが期待されている。
政府は男性育児休業取得率向上のため様々な取り組みを行っている。こういった取り組みは企業単位でも行われているが、社員の立場からは、その取り組みは企業のホワイトイメージを向上させるために利用されていると考えられている事が聞き取り調査から明らかになった。
さらなる男性育児休業取得率向上への手がかりを探るため厚生労働省による「イクメン企業アワード」に着目し、受賞した企業の取り組みを参考に取得率向上への改善策を探った。その結果、育児休業制度を企業全体に浸透させることや、取得者の前例を部署ごとに作り、職場が育児休業について理解することで制度を利用しやすい雰囲気を作ること、さらに、根本的な原因である長時間労働の国による是正も改善策として適切であると主張した。
講評 2016年度の卒業論文について特筆すべきことは、一次資料を利用した人が多かったことと、採用した分析手法が多様であったことである。たいていの人が文献情報のみに基づいて卒論を書こうとするのに対して、ゼミ生16人のうち9人が何らかの形で聞き取り調査を行ったのは、おそらくゼミ始まって以来の実施率である。およそ16年間の学校教育の集大成として卒業論文という作品があるとすれば、著者固有の独自資料を手がかりに作品製作に携わったことは大いに評価できる。また、昨年度につづき、既存統計資料の二次分析に果敢に挑戦した人が現れたことも大いに評価したい。
とはいえ、一次資料を使って書いた卒論が全て論文として満足のいく水準に達しているかというと必ずしもそうとは言いきれない。長い時間をかけて質問項目を吟味し、念入りに調査設計を行った上で実施した調査と、準備不足のまま見切り発車で実施した調査とでは自ずと結果の品質が異なってこよう。せっかく調査をするのだから、事前の準備をしっかりと行い、悔いのない形で調査を実施できればよかったのにと、少し残念に思うところがある。
16人のうち7人は、文献情報に基づいて卒論を書いた。歴史研究、国際比較、将来予測、政策提言などテーマは多岐にわたっている。こちらも、丹念に証拠を集めて説得的に持論を展開したものから、主観的な願望が先行して根拠があいまいなまま自説を展開したものまで水準はさまざまである。結局のところ、一次資料を使おうが、文献二次資料を使おうが、どれだけ卒論執筆に真摯に向き合ったかということが作品の出来映えに表れている。執筆者各自は、自分の胸に手を当てて大いに反省してほしい。
これから卒論を書こうとする下級生にひとつアドバイスをするなら、学校教育の集大成たる卒論の執筆がうまくいくかどうかの半分ぐらいは、テーマ選択に依存していることを肝に銘じてほしいということだ。テーマ選択を誤るとどんなにがんばってもよい論文は書けない。それほどテーマ選択には時間をかける必要があるということである。もちろん、テーマを選ぶためには関連する先行研究を探索して吟味し、検討することが欠かせない。結局のところ、ちゃんと勉強すればよい論文が書けるけれども、勉強しないと満足のいく成果は得られないという、極めてありきたりな結論に至る。
キーワード1 男性育児休業
キーワード2 長時間労働
キーワード3 イクメン企業
キーワード4 企業のホワイトイメージ
キーワード5  
戻 る
Copyright (C) Doshisha University All Rights Reserved.