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学科 | 産業関係学科 |
年度 | 2016 |
ゼミ名 | 阿形 健司 |
タイトル | 医療消費者と医師の過重労働 |
内容 | 近年、医療崩壊が叫ばれ、医師の過重労働という問題に関心が高まっている。医師の過重労働の問題は、医師不足や医療の高度化などの問題が複雑に絡んで、今日まで解決されていない。しかし、医師の負担感を増しているのはそのようなハード面だけではない。本稿では、医療を主体的に受容する顧客としての医療消費者と医師という新しい関係性に着目して、その関係性の誤ったあり方が医師の主観的な疲労感を増大させる一因なのではないかという仮説を立て、その仮説を現役医師へのヒアリング調査を通じて検証した。その結果、一部の医療消費者が自己決定権を根拠とした自己主張を過剰に展開し、医師の主観的な疲労感を増大させている現状を明らかにした。医師の主観的な疲労感が増大すれば、それによって医療事故や医師の離職が引き起こされ、私たちの安全な医療を受ける権利が損なわれる恐れがある。いい医療とは医師と医療消費者とが対等な関係のもとで協力していくことであろう。言い換えるなら医師は患者の基本的な権利に寄り添い、医療消費者は安全な医療の維持のためにも、治療が迅速にできるよう謙虚さを持つことが肝要であるといえるだろう。 |
講評 | 2016年度の卒業論文について特筆すべきことは、一次資料を利用した人が多かったことと、採用した分析手法が多様であったことである。たいていの人が文献情報のみに基づいて卒論を書こうとするのに対して、ゼミ生16人のうち9人が何らかの形で聞き取り調査を行ったのは、おそらくゼミ始まって以来の実施率である。およそ16年間の学校教育の集大成として卒業論文という作品があるとすれば、著者固有の独自資料を手がかりに作品製作に携わったことは大いに評価できる。また、昨年度につづき、既存統計資料の二次分析に果敢に挑戦した人が現れたことも大いに評価したい。 とはいえ、一次資料を使って書いた卒論が全て論文として満足のいく水準に達しているかというと必ずしもそうとは言いきれない。長い時間をかけて質問項目を吟味し、念入りに調査設計を行った上で実施した調査と、準備不足のまま見切り発車で実施した調査とでは自ずと結果の品質が異なってこよう。せっかく調査をするのだから、事前の準備をしっかりと行い、悔いのない形で調査を実施できればよかったのにと、少し残念に思うところがある。 16人のうち7人は、文献情報に基づいて卒論を書いた。歴史研究、国際比較、将来予測、政策提言などテーマは多岐にわたっている。こちらも、丹念に証拠を集めて説得的に持論を展開したものから、主観的な願望が先行して根拠があいまいなまま自説を展開したものまで水準はさまざまである。結局のところ、一次資料を使おうが、文献二次資料を使おうが、どれだけ卒論執筆に真摯に向き合ったかということが作品の出来映えに表れている。執筆者各自は、自分の胸に手を当てて大いに反省してほしい。 これから卒論を書こうとする下級生にひとつアドバイスをするなら、学校教育の集大成たる卒論の執筆がうまくいくかどうかの半分ぐらいは、テーマ選択に依存していることを肝に銘じてほしいということだ。テーマ選択を誤るとどんなにがんばってもよい論文は書けない。それほどテーマ選択には時間をかける必要があるということである。もちろん、テーマを選ぶためには関連する先行研究を探索して吟味し、検討することが欠かせない。結局のところ、ちゃんと勉強すればよい論文が書けるけれども、勉強しないと満足のいく成果は得られないという、極めてありきたりな結論に至る。 |
キーワード1 | 医療消費者 |
キーワード2 | 医師の過重労働 |
キーワード3 | 患者の権利 |
キーワード4 | |
キーワード5 | |
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