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学科 | 社会福祉学科 |
年度 | 2017 |
ゼミ名 | 木原 活信 |
タイトル | インクルーシブな余暇支援の実現―学齢期の障害児と同年代の児童との相互関係に着目して― |
内容 | 近年、障害児の余暇支援の重要性が指摘され、放課後等デイサービス等の充実が図られている。しかしそれらは、障害児のみを対象としたものが多い。障害児と同年代の児童は、通う学級が異なる上に余暇を過ごす場にも違いがあり、障害の有無に関わらず集える場が乏しいのが現状である。先行研究においても、障害児と同年代の者の余暇を共に過ごす者の違いや、同年代の児童との交流の少なさが明らかにされている。そこで、障害児に的を絞った余暇支援ではなく、障害児と同年代の者とが交流できる余暇支援が必要だと考えた。本論文では、学齢期の障害児と同年代の児童が共に行う余暇活動において、互いにどのような影響を及ぼすのかについて、日米の実践例をもとに文献調査を行った。そして、障害の有無に関わらず誰もが参加できるインクルーシブな余暇支援の実現は、障害児と同年代の児童に「成長」「楽しみ」「交流」という相互関係をもたらすという結論に至った。 |
講評 | テーマ設定は自ら考えるというのが僕の方針である。それは、テーマを自ら発見し、それを探求する過程こそ研究の第一歩であり、そこに重要な意義があると考えるからである。その意味では、今年も各自よくテーマを自分なりに模索しつつ、よく練られたテーマを考えたと思う。その結果、上記に記すようなテーマとなった。 今年の卒論のキーワードは、精神障害、聴覚障害、障害児の余暇活動、身体障害、医療ソーシャルワーク、行旅死亡人、キリスト教福祉、などと多彩であるが、そのキーワードは極めて現代的な福祉の重要課題に基づくテーマともなっている。それぞれが社会福祉学を学ぶにあたっての集大成として、これらのテーマと必然的に出合ったようであったが、鋭い問題意識をもってユニークな研究テーマに取り組めたと思う。 テーマ設定にはその時代を色濃く反映してその解決を模索したものが多いが、社会福祉学の場合、たまに学生の自らの青年期の課題を生きるために苦悩しつつ、それを必死で言語化している場合も散見される。歴史学者の阿部謹也氏が言うところの「自分のなかに歴史を読む」ということであろう。これを機にそれらの問題を更に突き止めていってもらいたいが、仮にもテーマそのものが自らの個人体験的課題に直結するのであれば、この卒論の論文執筆を通して、その問題から「解放」された自由人になることも切望したい。 ところで、テーマに付随する先行研究を整理するのには手間と時間がかかる。これに苦労してなかなか前に進まなかったものもあったが、これを丹念に進められたかどうかが論文の評価に直結してくる。今年は心配症の学生が多く、またこだわりがきつく、それゆえに最後まで必死で議論したものもあった。逆にたのもしいと思う。 今年は難解な英語文献まできっちりと読みこなして、自らの課題を明確にそこに集中させた完成度の高い論文もあった。学部生でここまで書けたことは高く評価したい。また研究者のきわめて難解な「障害文化」についての議論と正面から向き合い、「もがき苦しみ」ながらも自らの模索した結論まで導いた研究も高く評価できる。また精神障害と家族の孤立の問題に真摯に向き合った論稿も文献収集に苦労しながらも自分の主張を述べることができた。よくがんばった。また自ら、調査課題を設定し、手間と時間をかけて自分なりの独自のインタヴュー調査を実施した論文もあったが、特に考察や着眼が実に鋭くこれも大いに評価できる。また実践フィールド関心をもち、ソーシャルワーカーへのインタヴューも実施するなど明確な課題を見出した論文もあったが、その分析・考察の課題はあるにせよ、リアリティのある論文となった。また、政府の官報等の膨大な数字データをきっちりと読み解き、それをもとにあまり扱われることのなかった行旅死亡人に着目し、孤独死の現状を考察した論稿もあったが、地道な努力の結晶であり、大変な労力であり、それゆえの力作となった。また自らのこれからライフワークとして進むべき道にもなる教会におけるキリスト教福祉の役割と課題に丹念に焦点をあて、それを愚直なまでに一貫して論じきった記念すべき論文もあった。その意気込みとエネルギー、そしてその作業を大いに評価したい。 締め切りぎりぎりまで細かいところに拘り続けて厳しい論文執筆作業に苦心した者もあったが、全体として、私の厳しい注文にも自らの問題意識を軸に必死で活字にしようと本当によくがんばったと思う。今年はその意味で労作揃いであり、論文として優れていた。大学院生の学位論文顔負けの鋭い問題意識をもって新機軸を模索しようとするような論文も散見された。 今後は、この卒論執筆作業の苦労を糧にして、社会に出て行って一つのことを根気強く主体的に、深く自分の力で掘り下げていくことを続けて欲しい。 |
キーワード1 | 余暇支援 |
キーワード2 | インクルーシブ |
キーワード3 | 障害児と同年代の児童との相互関係 |
キーワード4 | |
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