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学科 社会福祉学科
年度 2017
ゼミ名 木原 活信
タイトル キーパーソン不在の患者が地域で暮らしていくための医療ソーシャルワーカーの支援の一考察
内容 近年の日本社会は、人々の関係性に変化が生じている。以前と比べ、つながりが弱い社会になってしまったのである。こうした流れの中で、無縁社会や社会的孤立といった、かつての日本には存在しなかった問題が現れるようになった。本研究では、無縁社会や社会的孤立という現代の問題の中でも、特に医療の現場における、キーパーソンが不在であることで困難を抱える患者に焦点をあてた。キーパーソン不在の患者が抱える現状や課題についてまとめ、実際に現場で実践を重ねている医療ソーシャルワーカーへインタビューを行った。それらをふまえ、病院や地域の中で医療ソーシャルワーカーはどのような役割を持ち支援を行っていくべきなのか、また、病院と地域の間ではどのような連携が必要であるのかを検討した。
キーパーソン不在の患者は地域住民等の地域資源が中心となり見守りをし、そこに専門職もアシスト役として支援に介入するべきだという結論に達した。
講評 テーマ設定は自ら考えるというのが僕の方針である。それは、テーマを自ら発見し、それを探求する過程こそ研究の第一歩であり、そこに重要な意義があると考えるからである。その意味では、今年も各自よくテーマを自分なりに模索しつつ、よく練られたテーマを考えたと思う。その結果、上記に記すようなテーマとなった。
今年の卒論のキーワードは、精神障害、聴覚障害、障害児の余暇活動、身体障害、医療ソーシャルワーク、行旅死亡人、キリスト教福祉、などと多彩であるが、そのキーワードは極めて現代的な福祉の重要課題に基づくテーマともなっている。それぞれが社会福祉学を学ぶにあたっての集大成として、これらのテーマと必然的に出合ったようであったが、鋭い問題意識をもってユニークな研究テーマに取り組めたと思う。
テーマ設定にはその時代を色濃く反映してその解決を模索したものが多いが、社会福祉学の場合、たまに学生の自らの青年期の課題を生きるために苦悩しつつ、それを必死で言語化している場合も散見される。歴史学者の阿部謹也氏が言うところの「自分のなかに歴史を読む」ということであろう。これを機にそれらの問題を更に突き止めていってもらいたいが、仮にもテーマそのものが自らの個人体験的課題に直結するのであれば、この卒論の論文執筆を通して、その問題から「解放」された自由人になることも切望したい。
ところで、テーマに付随する先行研究を整理するのには手間と時間がかかる。これに苦労してなかなか前に進まなかったものもあったが、これを丹念に進められたかどうかが論文の評価に直結してくる。今年は心配症の学生が多く、またこだわりがきつく、それゆえに最後まで必死で議論したものもあった。逆にたのもしいと思う。
今年は難解な英語文献まできっちりと読みこなして、自らの課題を明確にそこに集中させた完成度の高い論文もあった。学部生でここまで書けたことは高く評価したい。また研究者のきわめて難解な「障害文化」についての議論と正面から向き合い、「もがき苦しみ」ながらも自らの模索した結論まで導いた研究も高く評価できる。また精神障害と家族の孤立の問題に真摯に向き合った論稿も文献収集に苦労しながらも自分の主張を述べることができた。よくがんばった。また自ら、調査課題を設定し、手間と時間をかけて自分なりの独自のインタヴュー調査を実施した論文もあったが、特に考察や着眼が実に鋭くこれも大いに評価できる。また実践フィールド関心をもち、ソーシャルワーカーへのインタヴューも実施するなど明確な課題を見出した論文もあったが、その分析・考察の課題はあるにせよ、リアリティのある論文となった。また、政府の官報等の膨大な数字データをきっちりと読み解き、それをもとにあまり扱われることのなかった行旅死亡人に着目し、孤独死の現状を考察した論稿もあったが、地道な努力の結晶であり、大変な労力であり、それゆえの力作となった。また自らのこれからライフワークとして進むべき道にもなる教会におけるキリスト教福祉の役割と課題に丹念に焦点をあて、それを愚直なまでに一貫して論じきった記念すべき論文もあった。その意気込みとエネルギー、そしてその作業を大いに評価したい。
締め切りぎりぎりまで細かいところに拘り続けて厳しい論文執筆作業に苦心した者もあったが、全体として、私の厳しい注文にも自らの問題意識を軸に必死で活字にしようと本当によくがんばったと思う。今年はその意味で労作揃いであり、論文として優れていた。大学院生の学位論文顔負けの鋭い問題意識をもって新機軸を模索しようとするような論文も散見された。
今後は、この卒論執筆作業の苦労を糧にして、社会に出て行って一つのことを根気強く主体的に、深く自分の力で掘り下げていくことを続けて欲しい。
キーワード1 キーパーソン
キーワード2 医療ソーシャルワーカー
キーワード3 社会的孤立
キーワード4 地域における支援
キーワード5  
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