詳細
学科 産業関係学科
年度 2017
ゼミ名 石田 光男
タイトル 来たる第四次産業革命-文系が淘汰されないための学びとは-
内容 文科省は2015年に国立大学に人物社会系の学部廃止と組織改編を求めた。社会に出て役立つスキルを学ばせる「実学」を重要視するようになったが、これには有識者やマスコミが文系軽視だと一斉に批判し始めた。文系の知は彼らは言うが、現実問題、私を含め今の文系学生を納得させることができるだろうか。
なぜ文系が必要ないと言われてしまうようになったのか、本論はそれを「現在までの大学状況」と来たる「第四産業革命」の両視点から考察している。一章では文系が軽視されてきた流れを戦前・戦後までさかのぼり、現在の大学状況も含め文系の弱点を見出した。二章ではAIやIT技術で世界に遅れをとっている日本の理系分野での焦りを述べ、政府が理系に投資したい理由を考察した。三章では人文社会がなぜ必要か、どう役立つのかを有識者の意見を記述し、四章ではこれからの時代に求められる学問・スキル、文系の人間が淘汰されないための策を述べた。
日本社会が取り巻く社会情勢が変わる中で、大学の文系教育に未来はあるのか、このまま終わってしまうのか。私たちは考え直す時期に来ている。
講評 1.全体の講評。
卒業論文は一人一人の言葉の正しい意味での自己紹介だと思う。「わたしはこういう人間です」「これ以上でもこれ以下でもありません、私という人間は」ということをどうしても表現することになってしまうのが言葉の本性だからである。言葉遣いの現在の到達点、それが各人の卒業論文である。
そこからが君たちの出発である。
いくつかのコメントをしたい。
第一、参考文献からの引用は丁寧にということを強調した。私は正直な論文が好きだ。だから他者からの引用と自分自身の言葉とを仕分けする作業は正直な自分になる作業である。その結果、みすぼらしい自分の発見に行き着くことが多いとは言え、かすかな輝やきをたたえている自分もそこにはかならずいるはずだ。その輝きを火種にこの人生を歩むのだ。
第二、実証的な研究であれ、文献研究であれ、自分を横に置いた論文はよくない。直ぐに反論があろう。実証研究であれば、事実に虚心に向かえば向かうほど自分などを出しようがないではないか、文献研究であれば文献の論旨を正しく追えば追うほど自分などを出しようがないではないかと。しかし、無限な事実の中からどんな事実が重要だと観るかに自分が現れるのだし、文献研究であればマル写しでない以上、自分の読み方が現れるのだ。その自分の現れ方、あるいは表し方が自分の個性であり、その説得力が自分の力量なのだ。そもそも自分を隠し続ける勉強などは面白くもないはずだ。勉強は打算でやるのではなくて面白いからやるのだ、ということをわかって卒業して欲しい。
第三、研究(勉強)と社会での仕事の関係。研究(勉強)は卒業でお終い、4月からは仕事という別世界だという理解は浅はかである。仕事を始めてみて本当の勉強が始まったと先輩たちは言う。実は地続きなのだ。全く二つの世界が別物であれば、いいですか、大学での勉強は無用だということになる。その気配が濃厚に漂っているのが現代日本ではあるけれど。仕事には実践が伴うが、勉強には認識という脳細胞の活動はあっても実践が伴わないという区分が先の言明の根拠になっているが、認識と実践とはさほど機械的に区分できない。「こう考える」、だからこうしてみようというように地続きになっている。
偽りのない自分の到達点としての卒業論文を直視して、そこから自らの研鑽を積み上げていって欲しい。
2.個別の論文で評価すべき論文について
「日本の音楽産業における産業構造の記述と考察」は問題を追い詰めていく態度がよい。ただし、読者を連れて追い詰めるには、語彙、の正しい説明が必要になる。その点をもっと図式的に整理する必要がある。産業組織論という分野の中で考究する必要を感じた。
「日本労使関係史の制度分析」は野心的な論文である。制度の科学性ということに抽象的にこだわったために、史実を整理する概念構成が制度の概念構成と一致せず、わかりにくい論文となっているが、野心を買いたい。科学性vs物語性、青木昌彦vs西部邁の分岐点に関わるが問題に取り組んだ。
「『21世紀の不平等』から読み解く所得不平等格差」は大きな課題に取り組んでいる正直なよい論文である。著者の提案について納得できない点を正直に書いている点がよい。
「21世紀の新しい働き方」は多様な働き方についてのバランスの取れた考察となっている点で評価できる論文である。同一労働同一賃金の原則に基づく、若手正社員と非正規との接合の合理性の指摘は特に説得的である。
キーワード1 AI
キーワード2 人文社会
キーワード3 大学
キーワード4 文系
キーワード5 理系
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