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学科 メディア学科
年度 2017
ゼミ名 竹内 幸絵
タイトル イヤミスに魅了される人々~湊かなえを事例に~
内容 近年、「イヤミス」という言葉が小説の新たなジャンルとして広まりつつあり、その意味は読んでいて嫌な気分になるミステリ。なぜ人々はわざわざ嫌な気持ちになる物語を求め、魅了されるのか。この疑問を明らかにするため、私はイヤミス作家としてその名を轟かす人気作家・湊かなえとその作品(『告白』・『リバース』の二作)を研究対象とし、読者により投稿された感想のリストアップと傾向分析、作品内容との比較検討を行った。その結果、読者は人間の狂気や不幸な状況などの嫌な展開を小説で体験することに面白さを感じる「人の不幸は蜜の味」状態の者と恐ろしいけれど知りたいと言った好奇心や探求心を擽られる「怖いもの見たさ」状態の者の2種類に大別でき、作品中にそうした心理を引き起こす表現や構成が数多く含まれている事が分かった。私はこの2つの心理に関する研究を元に「イヤミス」についても同様の心理効果が引き起こされると結論付けた。
講評 読後に暗い気持ちがのしかかるミステリー小説が昨今人気を呼んでいる。娯楽ジャンルであるはずのミステリー小説。現代人はなぜ暗い気持ちになる小説をわざわざ選んで読むのか。なぜそれが人気となるのか。これが本論文の問題提起である。執筆者は代表作家である湊氏の2小説の内容分析にとりかかるとともに、指導者と相談しながら読書メーターという感想記載サイトに掲載された感想を使って読者の思考の傾向を調査していった。小説の内容と読者の感想を比較するうちに「最悪の結論のはずなのになぜか爽快感」を感じる読者に二つのタイプがあり、湊はこの二つのタイプの読者を巧みに導く表現をしていると分析した。それだけでなく湊作品の魅力を、心理描写がこまやかで、読者は小説なので話は偽物とわかっているのに引き込まれ本当にあるのかもしれないと感じるという分析も行った。さら二つのタイプにある心理は普段の私たちの心理にも底流しているのではないかという提示にも発展した。執筆者の「人」へのやさしさと興味、そして文意を汲む洞察力が「イヤミス」を題材に引き出された論文である。
キーワード1 イヤミス
キーワード2 湊かなえ
キーワード3 人の不幸は蜜の味
キーワード4 怖いもの見たさ
キーワード5 心理分析
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