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学科 メディア学科
年度 2017
ゼミ名 竹内 幸絵
タイトル 映画『君の名は。』の興行成功要因分析~新海誠のセカイ系脱皮を中心に~
内容 国内外でシンドロームとなった『君の名は。』。本論文では、観客はなぜこのエンターテインメント映画に心を打たれたのかという疑問を、「新海誠のセカイ系脱皮」を中心に解いていく。従来新海の作品は「セカイ系」に分類され、蓋然性の欠如、作品が消費される社会との関係性の欠如ゆえ非難を受けてきた。だが『君の名は。』は、「災害」を作品と現実社会を結ぶキーワードとし、積極的に観客と疎通しようとした。新海は、3.11を機に観客との関係性を考慮するようになったことを認め、本作を通じて希望と癒しを伝えようと試みた。3.11を想起させる彗星追突、2013年と2016年の時間的設定、能動的に喪失感を克服していく主人公たちの姿を通じて新海はセカイ系の殻を破り、これによって観客との関係を中心に置くことに初めて成功した。なお、フィクションであっても、メッセージは受け手が生きているリアルワールドまで届き、社会の傷を慰めることができることを立証した。この一連の作品スタイルの変化が『君の名は。』の興行成功を導いたという結論に至った。
講評 壮大な卒論に仕上がった。新海誠作品「君の名は。」の魅力を執筆者の渾身の力で書ききったといえよう。論文は同氏の代表作6本のあらすじのまとめから入り、続いてそれらに共通する設定「すれ違う男女」等について述べていく。ここで登場するのが「セカイ系」という用語である。「セカイ系」は、日本のサブカルチャー分野の物語の類型の名称で、定義はまだ明確ではなく諸説ある。執筆者は恋愛関係などの二人だけの問題が何ら必然性のないまま「この世の終わり」といった大問題に直結するストーリー展開、と位置付けている。新海氏の従来の作品はこの「セカイ系」の代表としてやや揶揄されて評価を受けてきた。本論文の主論では、「君の名は。」が、「セカイ系」を超えて人々の共感を得、東日本大震災を癒す役割を果したと論じていく。そこでは「君の名は。」が備える、村上春樹小説の主人公の喪失感に憧れていた新海氏の心理が反映された場面や、ストーリーボードの作成から導いた、距離が広がるとともに喪失感が広がっていく設定などが示される。留学生である彼女の卓越した日本語能力への驚嘆だけでなく、アニメーションを分析する卒論として今後に繋がる大きな成果として評価したい。彼女には、舞台や映像創作に関わるという夢がる。今後もこの夢を胸にしつつ国際社会で活躍してほしい。
キーワード1 新海誠
キーワード2 セカイ系
キーワード3 災害
キーワード4 喪失感
キーワード5 映画の分析
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