詳細 | |
---|---|
学科 | 社会学科 |
年度 | 2018 |
ゼミ名 | 藤本 昌代 |
タイトル | 「飽くなき達成意欲と承認欲求」の魔力―大手進学塾での働き方から見えるもの― |
内容 | 本稿は、昨今メディアなどでも度々取り上げられている「過重労働」をテーマにそれがなぜ生じるのかを記述した。社会学的研究の対象とされていなかった大手進学塾を調査対象にし、現役塾講師10名へのインタビュー調査と3年半にわたる参与観察を用いて働き方をリアルに描いている。本田由紀(2007)が若者を調査対象にしてなぜ過重労働が生じるのかを導き出した「やりがい搾取」論を否定しつつ、若者とは呼べない30~40代の方が若者より「過重労働」に走っていることが多々あることを指摘した。本調査によって彼らの周りでは充実感、有能感獲得の無限螺旋ループによる自縛現象が生じていることや役割期待の不明瞭さが、際限のないサービスを暗黙に要求するというメカニズムを発見した。これらが〈達成意欲と承認欲求の魔力〉の正体なのである。 |
講評 | 本稿は教育産業で学校教員の過重労働が社会問題になる中、塾講師の労働時間についての研究が非常に少ないことから、彼らの過重労働の実態と働きがいについて調査を行ったものである。調査には、なかなか開示されがたい組織内部について筆者自身が4年間塾講師としてアルバイトした中で獲得した信頼関係により許可された貴重な内容が含まれている。過重労働は経営者、管理者による搾取の問題が問題視されがちであるが、本稿では顧客である子供たちが学校を終えて来校する時間帯、土日等に仕事が集中するため、深夜就業や業界外の友人とつきあいにくいという構造的要因や専門的職業であるため、難易度の仕事への挑戦に働きがいを感じるという、自ら頑張ってしまう自縛メカニズムと長時間労働の関係から職業エートス的要因を発見している。搾取論で労働現場を断定しようとする研究者には見えない現象を解明しているといえよう。 |
キーワード1 | 過重労働 |
キーワード2 | 承認欲求 |
キーワード3 | 達成意欲 |
キーワード4 | |
キーワード5 | |
戻 る |