詳細
学科 産業関係学科
年度 2018
ゼミ名 樋口 純平
タイトル 年功賃金と成果主義
内容 本論文は、企業の人事制度に注目し、年功賃金と成果主義の動向を把握することを目的としている。
日本では、年齢や勤続年数に応じて、賃金が上昇していく雇用慣行が戦前から存在していたが、1975年からは経済成長率の低下を背景に、職能資格制度が多くの企業で採用された。1990年代からは経営環境が更に厳しくなり、賃金制度・処遇の見直しが検討され、労働者一人ひとりの業績・成果によって賃金を決定する傾向が強くなった。
実際に企業の人事制度事例をみると、多くの企業で年功制の廃止が行われており、役割等級制度や職務等級制度といった、業績や職務・役割の達成度が評価される制度が導入されていた。一方で、職能資格制度に回帰する企業も存在し、成果のみを評価する極端な成果主義に修正が行われ、成果以外に能力や行動を評価する仕組みが整えられていた。
今後も、仕事基準の制度が多くの企業で導入されていくことが考えられるが、今回取り上げた人事制度事例をみると、仕事基準の制度が必ずしも全ての企業で上手く機能するとは限らないことがわかった。
講評 卒業論文の作成にあたっては、自分が関心を持ったテーマについて、いろいろと本を読んでみてよかった、多少は苦しいながらも書き進める中に楽しさや充実感があった、と感じてほしいと思う。自分自身に向けて書く、という気持ちが大切と思う。

とはいえ、単なる自己満足に終わってもよくない。自分の設定したテーマについて、先行研究は何を語っているか、現状はどうなっているのか、を知る必要がある。すると、通常は、よく調べるほど自分に語るべきことがあまり残されていないことに気づく。そもそも、卒業論文でオリジナリティのある事実発見や考察を行うことは、たいへんむずかしい。それでも、先行研究を追いかけながら、自分なりに納得のゆくストーリーを展開することはできる。また、少数でもよく選んだ文献と格闘することで、意義のある考察をすることもできる。

 本年度の樋口ゼミ生の卒業論文は、どうであったか。テーマ設定としては昨年度に引き続きワークライフバランスを始めとした働き方改革について論じたものが中心となったが、自身の就職先企業や業種と関連づけて研究を行ったものも少なくなかった。商社に就職する者は商社マンのキャリア形成を題材としたり、種苗会社に就職する者は農業の海外進出を題材としたり、いずれも自身の将来に直接関係するテーマを取り上げたものである。こうしたタイプの研究には、メリットが少なからず存在するように思われる。社内のつてを頼りにインタビュー調査を実施したり社内資料にあたったりすることができるし、何より自身のより直接的な問題関心に支えられた研究のモチベーションを得ることができる。一方、働き方改革について論じた研究では、長時間労働の是正に関する比較的オーソドックスなものから地方公自治体のワークライフバランスのようなユニークなものまで、その切り口に自己の問題関心や個性が表れていたと思う。また、先行研究の豊富なテーマでは文献の渉猟が求められ、先行研究の乏しいテーマでは事例分析等にもとづいた自身の概念構成力が問われた。

 以上のような本年度の卒業論文は、総じて構想から準備、執筆に至るプロセスが順調に進められたという印象がある。一方、総じて先行研究の検討に不十分さが見られることも否定しがたい。この点は、来年度に向けた教員自身の課題でもある。


キーワード1 年功賃金
キーワード2 成果主義
キーワード3 人事制度
キーワード4 能力
キーワード5 職務
戻 る
Copyright (C) Doshisha University All Rights Reserved.