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学科 メディア学科
年度 2018
ゼミ名 竹内 幸絵
タイトル 角田光代による「愛」の描写 ー小説『愛がなんだ』を例にー
内容 角田光代は、多様なジャンルにおいて多くの作品を生み出している直木賞作家である。それらの中でもとりわけ彼女らしさが際立つのは、「愛」にまつわる作品や描写であると感じている。本論文では、2004年に発表された小説『愛がなんだ』を例として取り上げ、作品を通じて角田氏が表現したかった愛の形を分析する。登場人物のセリフや行動から、それぞれの持つ恋愛観を整理し、その差異を比較、検討する。また、愛に関する先行研究を読んで知見を深めるとともに、角田氏のエッセイや他の小説も併せて分析し、『愛がなんだ』の執筆に至った経緯や作品間の共通点を探る。最後に、分析を通じて得た結論と自身の価値観を照らし合わせ、愛に関する持論を展開し、本論文の結びとする。
講評 本論文は2004年に発表された小説を分析対象としている。当初筆者は複数の作家作品の比較や同一作家の複数策の比較も検討したが、最終的には自身が最も強い興味を持っていた作品『愛がなんだ』に絞り、その描写、表現を分析することにした。それは直木賞作家・角田光代氏の多彩な作品の中でも特に特徴的なジャンルが「愛」に関する作品であり、また複数ある氏の「愛」に関する作品の中でも当作が最も強い力があると筆者が考えたからである。筆者自身が文章を書くことに極めて強い興味を持っており、そんな彼女にとって角田氏の作品から「実体のない『愛』の在り方を自分なりに考察する。」ことは必要な作業だった。
分析は、愛にまつわる研究、特に青年期の愛を論じた先行研究をも読み込み、恋は相対性、愛は(無条件の)絶対性といった認識の幅を広げつつ進められた。主人公テルコの一途な愛し方は通常当たり前、「ふつう」と思われている恋愛感情とはかけ離れているが、それがテルコにとっての「ふつう」なのである、と締めている(五章)。分析を始めていた夏、この作品の映画化が決まった。2019年に封切られるという。期せずして15年前の作品が再評価される時機を見越した卒論となった。
筆者も「毛色の違った」卒論だと書いている通り、本論は研究というよりも筆者の小説のようにも思える。何を書きたいのかを突き詰め、書きたいことを角田氏の小説分析という形を使って構築してみせた。それは何より彼女がこの作品をとことん「愛」していた(「おわりに」参照)からできたのだと思う。
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