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学科 教育文化学科
年度 2008
ゼミ名 越水 雄二
タイトル W.B.イエイツとアイルランドの民間伝承―物語と人間形成の関係性をとらえる試み―
内容 本論文では民話や昔話などの伝承の物語は一体、人間形成にいかなる影響を及ぼすのかという問題意識から、W.B.イエイツとアイルランドの民間伝承の関係に注目して考察を行った。イエイツは若い時から民間伝承に注目して故郷アイルランドで民話を採集し、その後それを基に意欲的な創作活動を行って、アイルランドの文芸復興運動に寄与したと言われる。彼が生きた時代は都市が近代化する変動の時代であった。社会の変動の中、彼はアイルランドの民話世界を探求し、再構築する中で自己探求したのである。
受け継がれたアイルランドの民間伝承は、時代をさかのぼって物語文化を考察すると、古いケルト民族の信仰に根づいている。信仰に基づき自然豊かな風土で生き生きと育まれた異界の物語は、人々の心を強く捉え想像力をたくましくした。イエイツの作品は故郷の物語文化の豊かさに溢れ、また創作によって彼は、自己の人生の出来事を昇華し、物語世界を再構築することでアイルランドの文学をさらに豊かなものとした。彼が創作によって自己を物語たり、再構築しつつ生涯を通じて人間形成していく過程を学ぶことは、現代の我々にも大きな示唆と可能性を与えるものである。
講評 このゼミでは、西洋の教育文化にかかわる研究テーマを一人ひとりが自分の興味関心に基づいて定め、およそ一年間―中には構想段階から一年半近く―、卒業論文に取り組んできました。2万字の卒論を執筆したのが12名、1万字の卒論を執筆したのが4名です。提出された各論文は、先行研究を超える独創的な成果に至ったものは残念ながらありませんが、著者の努力と工夫の跡が窺える点ではユニークな学習と考察の成果と評価できます。
ゼミ生を指導したというよりも、私は皆さんの卒論作成に併走しながら、さまざまな問題について学び、考える機会をもたせてもらいました。中には、おそらく一生、自分自身からは決して着目しなかっただろうと思うテーマもあり、それらを扱う卒論に出会えたことをありがたく感じています。また、自分も知っている、あるいは考えた経験をもつテーマについても、他者の視点からの調査と検討を媒介にして改めて理解を深められ、うれしく思います。こうした感謝や喜びの気持ちは、ゼミ生同士でも共有されているでしょう。
キーワード1 W.B.イエイツ
キーワード2 物語文化
キーワード3 民間伝承
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