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学科 産業関係学科
年度 2019
ゼミ名 冨田 安信
タイトル 地方を離れる若者たち
内容  本論文では、東京に移住する若者に焦点を当て、若者の地方離れや東京一極集中がなぜ
生じているのかを明らかにし、地方への人口流入や若者の地方定着、地域活性化には今後
]どのような対策が必要かを示している。戦後、1960年代の高度成長期、1987年をピーク
とするバブル経済期、そして、2000年以降に大きな人口移動が生じた。ただ、今回の人口
移動はこれまでと異なり、都市圏の雇用が拡大したためではなく、地方の雇用が縮小した
ために生じている。一度地方を離れた若者を帰って来させるためには地元への愛着が深く
関係し、地元で生活している中学・高校までの間に地元企業の情報をどれだけ知ってもら
うかが重要であり、それがUターン就職するきっかけとなることがわかった。そして、地
域の活性化には地域経済を担う中小企業の成長、地域の特徴を活かした産業政策、地域金
融機関の活躍が必要である。
講評 今年度のゼミ生の卒業論文のテーマの特徴は、人手不足をテーマに選んだ人が3人いたことである。1人は保育士・介護士の、1人はコンビニ店員の、1人はトラックドライバーの人手不足を取り上げた。人手不足なのに賃金が上がらない理由はそれぞれの業界によって異なる。保育・介護業界は政府の助成金によって事業が運営されているため、助成金が増えないと賃金も引き上げられない。コンビニ業界はフランチャイズ制を取っており、本部が収益を高めようとする行動が加盟店の収益を圧迫するしくみになっており、店員の賃金を引き上げるだけの収益があげられない。運送業界は規制緩和により中小の運送会社が増加して過当競争となり、運賃が低下して賃金も低下した。
 働き方改革やワーク・ライフ・バランスに関連したテーマを選ぶ人が多いのは最近の特徴であるが、今年度も3人がこのテーマを選んだ。1人は有給休暇の取得率の低さに注目し、定年後、継続雇用された高齢社員が有給休暇を取る現役社員の仕事をカバーするという提案をしている。1人は、睡眠時間が短くなると疲労が蓄積し、労働生産性が低下するという研究を紹介するとともに、多くの企業が取り組み始めている健康経営についても調べた。1人はオーストラリアの人々の余暇を楽しみ、仕事とのメリハリのきいた生活ぶりを紹介している。
他のゼミ生のテーマも簡単に紹介しておく。1人は、大企業は新卒一括採用、中小企業は経験者の中途採用が合理的である理由を、それぞれの雇用システムと関連づけて議論した。1人は外国人技能実習制度の問題とその原因を分析し、解決策として韓国の雇用許可制度が参考になることを提案した。1人は『LIFE SHIFT-100年時代の人生戦略-』を読んで、時代とともに変化する働き方、とくに高齢者と女性の働き方、テクノロジーが仕事に与える影響について考えた。1人は若者の地方離れと東京一極集中の原因について調べ、若者の地方定着、地域活性化に必要な政策について考えた。
 今年度のゼミ優秀論文には「運送業界の人手不足について」を選んだ。トラックドライバーの人手不足の現状、低賃金・長労働時間の現状を統計データによって確認し、労働条件が悪い理由、改善しない理由を運送業界のしくみを詳しく見ることで明らかにした。そして、考えられる改善策について提案している。論文の組み立てがしっかりしており、後輩たちの参考になるのではないかと思う。
キーワード1 東京一極集中
キーワード2 人口移動
キーワード3 地域金融機関
キーワード4 Uターン就職
キーワード5  
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