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学科 社会福祉学科
年度 2020
ゼミ名 木原 活信
タイトル 児童自立支援施設における夫婦小舎制 ―ジェンダーバイアスから考える疑似家庭的支援への疑問―
内容 児童自立支援施設には,職員が厳格な父親と優しい母親の役割を担い,疑似家庭的支援を行う夫婦小舎制という支援形態がある.これは,児童自立支援施設の前身である感化院創設 当初,一般的であった「厳父慈母」をモデルとした家庭像であり,「厳父慈母」が一般的な 家庭像とはいえなくなった現代においても根強く残っている.様々な家族形態や性の多様 化が認められつつある現代において,異性間の結婚を前提とした家族観を模したこの家庭 像は適切であるのだろうか.また,“男らしさ”“女らしさ”などの性的固定概念にとらわれた 家庭像ではないだろうか.本研究では,ジェンダーバイアスの視点から夫婦小舎制を捉え直 し,この体制について考察した.結論としては,時代に応じた家族や性の多様性を汲み取っ ていく必要があると考えられる.そのためには,「厳父慈母」を絶対視するのではなく,家 族の一面として捉え,支援を行っていくことが求められる.
講評 本論文では、児童自立支援施設における夫婦小舎制の問題をジェンダーバイアスがあるという鋭い問題意識から「疑似家庭的支援」を批判する挑戦的な論稿となった。本論で明らかにしているように、日本の児童自立支援施設には、職員が厳格な父親、そして優しい母親の役割を担うというある種の固定化したパターンがあると指摘している。これは具体的には、夫婦小舎制という形態の中に示されているものであるが、留岡幸助らの歴史的起源にも「厳父慈母」をモデルとした家庭像が認められると指摘する。しかしながら現代ではもはやこのような「厳父慈母」が一般的な家庭像ではなくなっていながら、まだそれが根強く残っていることを本論では批判的に捉えて問題視している。それは 「男らしさ」「女らしさ」という性的固定概念にとらわれた家庭像であるからである。
本論の結論としては、児童自立支援施設では時代に応じた家族や性の多様性を汲み取っていく必要があると主張している。そのためには、「厳父慈母」を絶対視するのではなく、家族の一面として捉え、支援を行っていくことを提言している。当初の問題意識は実に鋭いものであり、その批判的精神は高く評価できるものである。ただし、問題意識の切り込みに比して結論や提言はやや一般的で、その問題意識をより深く実践的課題として議論していくことが今後の課題であろう。
キーワード1 児童自立支援施設
キーワード2 夫婦小舎制
キーワード3 ジェンダー
キーワード4 固定的性概念
キーワード5 性的役割期待
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