詳細
学科 メディア学科
年度 2020
ゼミ名 佐伯 順子
タイトル 韓国の格差社会とその展望?『パラサイト半地下の家族』に込められたメッセージ?
内容 第92回アカデミー賞で世界的に評価を得た映画、『パラサイト半地下の家族』をもとに、韓国の格差社会の現状と展望について研究した。作品の研究を通じて、現在の韓国には様々な社会問題があるということが判明した。若者の失業率の増加、貧富の格差の拡大、超学歴社会など、容易に解決できない問題が数多く残っている。
また、『パラサイト半地下の家族』は映画作品として精巧に作り上げられていることも分かった。映画のストーリーのみならず、映像としても細部までこだわりが張り巡らされている。そして、本作品を通じて、監督であるポン・ジュノは、韓国の格差社会問題を世界に周知し、人生を「計画」したとしても社会が抱える大きな問題に行く手を阻まれてしまうというメッセージを込めていた。
これらの分析結果を踏まえ、韓国経済が中長期的にどのような形で発展していくのかについて論じる。
講評 韓国映画『パラサイト半地下の家族』を、韓国の格差社会の実情との関係から考察した。映画というメディアの歴史にさかのぼり、その表現手段としての特性とジャンルの多様性をふまえたうえで、映画というメディアが、ドキュメンタリーではなく物語映画に属するものであっても、社会問題を読み解く情報となりえることを指摘した。そして、『パラサイト半地下の家族』に関する映画批評における評価の要素、監督自身の作品の特性、受賞歴、専門家の見地からの受賞理由など、映画に関する質的かつ客観的な情報を詳細に検討し、オーディエンスの反応も質的に分析することで、格差社会に対するメッセージが映画についての高評価の理由であることを明らかにした。作品自体の質的な分析においても、描かれる貧困層と富裕層の家族像の対比、台詞分析、映像分析を通じて、正攻法の映画研究の方法論にのっとった質的な映像分析の成果をあげ、予告編の分析も含めて、キャスティングや嗅覚を含む五感への訴求の意味という細部にわたる考察を行った。現実の世界各国における若者の失業率や韓国社会における学歴と就職との関係についての客観的データともてらしあわせることで、社会科学的な視点からの映画研究の成果をあげ、この映画が単なる娯楽的なコンテンツではなく、国際社会に対して、韓国経済の二極化や貧困層が抱える問題についての強い問題提起をしたと結論づけた。分析対象を一作品に絞ることで、概説や評論ではなく、学術的に質の高い分析が可能となり、物語映画が含む社会的メッセージの重要性を明らかにする意味で、社会学部メディア学科の卒業論文として高く評価できる。
キーワード1 韓国社会
キーワード2 パラサイト半地下の家族
キーワード3 貧富の格差
キーワード4 学歴社会
キーワード5 ポン・ジュノ
戻 る
Copyright (C) Doshisha University All Rights Reserved.