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学科 メディア学科
年度 2020
ゼミ名 佐伯 順子
タイトル なぜ未体験の過去に懐かしさを感じるのか??“現代で再生産される80年代”と私たち?
内容 大学2年の冬、私が「80年代」という未体験の過去に触れた際、何故か懐かしさを感じた経験がある。そこで、本論では、まず「なぜ未体験の過去に懐かしさを感じるのか」という自身の体験に基づく謎を解き明かすことに重きを置いて、社会学にとどまらずに心理学や精神学、脳科学といった専攻分野外からの知見もふまえながら研究を進めた。その結果、私が感じた不可解な懐かしさの正体は「ノスタルジア体験に内在するデジャビュ体験」であることが判明した。次に、このデジャビュを引き起こす要因である「類似性」と「典型性」の2つの観点から、80年代が舞台となった映画『イニシエーション・ラブ』と『横道世之介』において、如何に80年代当時が再現されているのかを映像分析した。そして最後に、現代社会において「80年代」が一つのムーブメントとして巻き起こっていることについて触れ、近年のアーティストらによって“再生産された80年代”の事例を挙げていった。
講評 未体験の過去の表象に現代のオーディエンスがなぜ懐かしさを感じるのかを、メディアで表現される80年代の表象の詳細な分析にもとづき、「ノスタルジア」の語源から精神医学における議論までを参照して考察した。具体的には、80年代を背景とした複数の映像メディアが描く当時の流行、ファッションや髪型、音楽の事例を検討することで、歴史的、社会的背景も視野に入れ、80年代が戦後の政治の時代、選ばれた知識人の時代から、大衆文化の時代へという日本の歴史の転換点であり、同時に現代日本文化の源流であるがゆえに、80年代の表象が現代のオーディエンスに既視感をもたらすと指摘した。そして、近年のアーティストによりメディアで“再生産される80年代”が、「ノスタルジアに内在するデジャビュ体験」と「類似性」「典型性」を備えるがゆえに、80年代を実際に体験していないオーディエンスの共感を得ると結論づけた。心理学、脳科学、社会学と多様な分野の先行研究を消化し、「懐かしさ」という感情の由来という難しいテーマに学術的方法論で取り組んだ本論文は、正しく学際的かつ独創的な成果となった。
キーワード1 未体験の過去
キーワード2 ノスタルジア
キーワード3 デジャビュ
キーワード4 80年代ブーム
キーワード5 現代での再生産
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