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学科 産業関係学科
年度 2020
ゼミ名 寺井 基博
タイトル 1960年代から1970年代のイギリスの自動車工場における労使対立―出来高給制度から計測日給制度へと至った経緯
内容 本稿では,1960年代から1970年代にかけての激しい労使対立の様子を,Cowleyに位置するBL(British Leyland/イギリスの自動車会社)の組み立て工場(assembly plant)を中心にみていく。石田教授の方法論の一つである「賃金論」は,日本の賃金は個人査定を有する年功的賃金である「職能給」で,イギリスを含む欧米諸国の賃金は仕事に賃率が張り付いた「職務給」であり,このような賃金制度の比較を通して一国の社会の様相を把握するというものであった。また,欧米を優れたモデルとして基準化し,そこからの乖離で日本の実情を批判するという日本の学問に対する反省も行っている。
 今回題材にする著作は,BLの組み立て工場における労働組合支部の極左活動家であるアラン・ソーネットの手記『from MILITANCY to MARXISM』である。そこでは激しい労使対立の一部として,賃金制度を旧来の「出来高給制度」から,職務給制度の前身である「計測日給制度」へと変更を試みる経営側と,それに抵抗する労働組合の姿が描かれている。計測日給制度はいかにして成立したのか。その事実に迫っていく。
講評  卒業論文の作成は、先行文献を集めて読み込み、時にはインタビュー等の調査を行い、それらの知見をもとに自らの考えを文章にまとめるという地味で忍耐を要する作業なので、 各人が関心をもって取り組むことができるようにテーマは自由とした。ただし、各自が選んだテーマと産業関係学との関係を論文の中で明らかにすることを条件としている。
 今回提出された卒業論文のテーマは、組織や日本的雇用慣行など「労使関係」に関するもの、長時間労働、テレワーク、女性活躍など「働き方改革」に関するもの、プロスポーツ選手や各種講師などの「労働者性」に関するもの、貧困や雇用機会創出など「社会問題」に関するものに分かれている。文献研究が主であるが、聞き取り調査に基づいて考察を行ったものも複数みられた。
 いずれの論文も先行文献を丹念に読み込んで、主要な議論を整理したうえで各自の見解が述べられていた。文章表現も的確であり、全般的に論文としての完成度は高い。提出者全員が卒業論文作成に懸命に取り組んだ努力は大いに賞賛に値する。この卒業論文は紛れもなく各人の「大学生活の到達点」であり、これを起点として社会人としての一歩を踏み出し、 さらなる研鑽を積んでもらいたい。
 総合評価についてはいずれも甲乙つけ難いものであったが、最優秀論文は、「子どもの貧困における発生と連鎖のメカニズム-就労と教育による分析」とした。
 評価を分けたポイントは分析力と構成力であった。一般に、論文作成に費やした時間に比例して論点把握や考察が深まる傾向がみられるが、本論文では、それに加えて、これまでに培われた分析力と構成力、文章表現力が多いに発揮されている。ことばの定義、文献考察の深さ、統計データによる論証、論理の展開、そして明快な文章表現は秀逸で、総合力として他を抜きん出ていた。
キーワード1 出来高給制度
キーワード2 計測日給制度
キーワード3 職場委員
キーワード4  
キーワード5  
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