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学科 産業関係学科
年度 2020
ゼミ名 寺井 基博
タイトル サンクションの有効活用と可能性  -労働問題解決のための近道ー
内容  本論文では、人間の心理的欲求を踏まえたうえで、社員のノルマや目標達成に向かわせる“サンクション”の実態を評価する。本論文の分析のために5人の営業担当の20卒新入社員に「サンクションの影響力」についてヒアリング調査を行った。
 分析の結果、上司からの賞賛や叱責があるにも関わらず社員自身の心に響いていないことが明らかになった。その理由としては上司の賞賛や叱責の方法に問題があるという結果であった。そこから、より効率の良いサンクションの利用方法を提示している。しかしこれだけで解決するならばパワーハラスメントや長時間労働にこんなにも悩まされていない。そこで根本的な理由として【日本企業特有の動態的な課業決定】が、“無意識”に新卒社員を不満にさせている原因があると考察している。
 働くうえで重要なことは、前提として「貢献に相当する報酬を企業が払うこと」である。そこに加えて、サンクションをより有効活用して働きやすい環境作りをする姿勢が重要である。そして政府が日本特有の仕組みを理解しないと、どれだけ良い政策を提案しても解決に及ばないと結論づけている。
講評  卒業論文の作成は、先行文献を集めて読み込み、時にはインタビュー等の調査を行い、それらの知見をもとに自らの考えを文章にまとめるという地味で忍耐を要する作業なので、 各人が関心をもって取り組むことができるようにテーマは自由とした。ただし、各自が選んだテーマと産業関係学との関係を論文の中で明らかにすることを条件としている。
 今回提出された卒業論文のテーマは、組織や日本的雇用慣行など「労使関係」に関するもの、長時間労働、テレワーク、女性活躍など「働き方改革」に関するもの、プロスポーツ選手や各種講師などの「労働者性」に関するもの、貧困や雇用機会創出など「社会問題」に関するものに分かれている。文献研究が主であるが、聞き取り調査に基づいて考察を行ったものも複数みられた。
 いずれの論文も先行文献を丹念に読み込んで、主要な議論を整理したうえで各自の見解が述べられていた。文章表現も的確であり、全般的に論文としての完成度は高い。提出者全員が卒業論文作成に懸命に取り組んだ努力は大いに賞賛に値する。この卒業論文は紛れもなく各人の「大学生活の到達点」であり、これを起点として社会人としての一歩を踏み出し、 さらなる研鑽を積んでもらいたい。
 総合評価についてはいずれも甲乙つけ難いものであったが、最優秀論文は、「子どもの貧困における発生と連鎖のメカニズム-就労と教育による分析」とした。
 評価を分けたポイントは分析力と構成力であった。一般に、論文作成に費やした時間に比例して論点把握や考察が深まる傾向がみられるが、本論文では、それに加えて、これまでに培われた分析力と構成力、文章表現力が多いに発揮されている。ことばの定義、文献考察の深さ、統計データによる論証、論理の展開、そして明快な文章表現は秀逸で、総合力として他を抜きん出ていた。
キーワード1 サンクション
キーワード2 承認欲求
キーワード3 組織規範
キーワード4 動態的課業決定
キーワード5  
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