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学科 | 産業関係学科 |
年度 | 2020 |
ゼミ名 | 寺井 基博 |
タイトル | なぜ過労自殺はなくならないのか |
内容 | 本論文では、「なぜ過労自殺はなくならないのか」というテーマに沿って事例や文献、友人へのヒアリングを通して、様々な視点から調査していく。1章から3章では過労自殺の歴史から現在の発生状況までをデータをもとに整理した後、過労自殺の対象疾病や業務起因性などの各種認定基準を説明する。その後、4章で過労自殺の原因と考えられる先行研究を紹介し、5章では性別、年齢、役職、職種などが異なった4人の例を挙げ、過労自殺の要因を様々なケースから分析する。6章で過労自殺の要因を肉体的負荷と精神的負荷に分け分析する。また、7章ではそもそもなぜ長時間労働が発生するのか原因を探り、8章では長時間労働を続けてしまう日本人の労働観について、その歴史的変遷を踏まえながら調査していく。分析の結果、過労自殺は精神的に疲弊しうつ病などへ罹患することが特徴的であり、引き起こす要因としては過労死に比べ人間関係やノルマなどのプレッシャーに悩み、耐えきれずに死を選んでいたことが分かった。また、日本人特有の集団帰属意識や組織への忠誠心、社内の評価制度も過労自殺と密接に関わっていることが分かった。 |
講評 | 卒業論文の作成は、先行文献を集めて読み込み、時にはインタビュー等の調査を行い、それらの知見をもとに自らの考えを文章にまとめるという地味で忍耐を要する作業なので、各人が関心をもって取り組むことができるようにテーマは自由とした。ただし、各自が選んだテーマと産業関係学との関係を論文の中で明らかにすることを条件としている。 今回提出された卒業論文のテーマは、組織や日本的雇用慣行など「労使関係」に関するもの、長時間労働、テレワーク、女性活躍など「働き方改革」に関するもの、プロスポーツ選手や各種講師などの「労働者性」に関するもの、貧困や雇用機会創出など「社会問題」に関するものに分かれている。文献研究が主であるが、聞き取り調査に基づいて考察を行ったものも複数みられた。 いずれの論文も先行文献を丹念に読み込んで、主要な議論を整理したうえで各自の見解が述べられていた。文章表現も的確であり、全般的に論文としての完成度は高い。提出者全員が卒業論文作成に懸命に取り組んだ努力は大いに賞賛に値する。この卒業論文は紛れもなく各人の「大学生活の到達点」であり、これを起点として社会人としての一歩を踏み出し、 さらなる研鑽を積んでもらいたい。 総合評価についてはいずれも甲乙つけ難いものであったが、最優秀論文は、「子どもの貧困における発生と連鎖のメカニズム-就労と教育による分析」とした。 評価を分けたポイントは分析力と構成力であった。一般に、論文作成に費やした時間に比例して論点把握や考察が深まる傾向がみられるが、本論文では、それに加えて、これまでに培われた分析力と構成力、文章表現力が多いに発揮されている。ことばの定義、文献考察の深さ、統計データによる論証、論理の展開、そして明快な文章表現は秀逸で、総合力として他を抜きん出ていた。 |
キーワード1 | 長時間労働 |
キーワード2 | 労働観 |
キーワード3 | 精神障害 |
キーワード4 | 日本型経営 |
キーワード5 | |
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