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学科 産業関係学科
年度 2020
ゼミ名 寺井 基博
タイトル プロ野球選手は労働者か個人事業主か
内容  現状のプロ野球選手は、労働基準法と労働組合法で労働者性の判断基準が異なっており、労働者であるか個人事業主であるか曖昧な立場に立たされている。そのため、ドラフト制度や選手保留制度のようなプロ野球界独特の取引慣行が存在しており、それらの制度は選手の職業選択の自由を著しく制限していると批判の声が上がっている。本論文では、労働者の定義とプロ野球選手の雇用形態、就業形態を照らし合わせ、法的に不安定な立場に立たされているプロ野球選手の労働者性を明らかにし、選手と球団の適切な雇用関係の在り方について考察する。
 調査の結果、労働組合法上では労働者であるが、労働基準法上では一軍選手なら個人事業主、二軍選手なら労働者の性質が強いと考察した。そのため、プロ野球選手という大枠で労働者性を判断するのではなく、一軍選手と二軍選手とを個別に考えなければ、二軍選手のような労働者性の高い選手に適切な労働者としての保護が受けられない問題を解決できないということが明らかになった。
 これらの研究を通じ、プロ野球選手会という労働組合として球団と労使交渉を粘り強く進めていくことが現状の取引慣行や選手の待遇改善に繋がると考えている。
講評  卒業論文の作成は、先行文献を集めて読み込み、時にはインタビュー等の調査を行い、それらの知見をもとに自らの考えを文章にまとめるという地味で忍耐を要する作業なので、 各人が関心をもって取り組むことができるようにテーマは自由とした。ただし、各自が選んだテーマと産業関係学との関係を論文の中で明らかにすることを条件としている。
 今回提出された卒業論文のテーマは、組織や日本的雇用慣行など「労使関係」に関するもの、長時間労働、テレワーク、女性活躍など「働き方改革」に関するもの、プロスポーツ選手や各種講師などの「労働者性」に関するもの、貧困や雇用機会創出など「社会問題」に関するものに分かれている。文献研究が主であるが、聞き取り調査に基づいて考察を行ったものも複数みられた。
 いずれの論文も先行文献を丹念に読み込んで、主要な議論を整理したうえで各自の見解が述べられていた。文章表現も的確であり、全般的に論文としての完成度は高い。提出者全員が卒業論文作成に懸命に取り組んだ努力は大いに賞賛に値する。この卒業論文は紛れもなく各人の「大学生活の到達点」であり、これを起点として社会人としての一歩を踏み出し、さらなる研鑽を積んでもらいたい。
 総合評価についてはいずれも甲乙つけ難いものであったが、最優秀論文は、「子どもの貧困における発生と連鎖のメカニズム-就労と教育による分析」とした。
 評価を分けたポイントは分析力と構成力であった。一般に、論文作成に費やした時間に比例して論点把握や考察が深まる傾向がみられるが、本論文では、それに加えて、これまでに培われた分析力と構成力、文章表現力が多いに発揮されている。ことばの定義、文献考察の深さ、統計データによる論証、論理の展開、そして明快な文章表現は秀逸で、総合力として他を抜きん出ていた。
キーワード1 労働基準法
キーワード2 新宿労基署長事件
キーワード3 労働者
キーワード4 個人事業主
キーワード5 二軍選手
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